2009年10月31日

イースタン・プロミス

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 えー、この記事を書いているのは11月も半ばです。なかなかまとまったものを書く時間が取れなくて。でも時間ができたからにはうだうだ言わずに書いてしまいましょう。
 そういやあ大昔にSGA様の所の記事で読んだよな…なんて思いだして、今回あらためて見直してみました所…ははは、ネタバレ思いっきりしてるんですね(笑)。記事の内容をすっぱり忘れててよかったです(^^;)←読む端から忘れるってのも便利な性分です。
 こちらはネタバレバリバリですのでご注意下さい↓
 http://sga851.cocolog-izu.com/sga/2008/11/post-4145.html

 で、それとは別口でも、「ヴィゴが『インディアン・ランナー』に続いて全〇になってる」ってのはAmazonのカスタマーレビューや、もっと前にネットのニュースで、「忘れられない映画のヌードベスト30」に入ったというのを読んでたので知ってました。
 え?何?「王の帰還」ならぬ「王の〇間」?イヤン、アタクシそんなのが目的ではなくってよ!…いや本当に。あのシーンだってあくまで必要だからです(いや少なくともクローネンバーグ監督に言わせれば不可欠なんでしょう!)。「無駄はやらない」「必要と認める部分は思い切ってやるけど、決して描き込みすぎない」という芸風(?)の監督かなあとは、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でも思ったので、ああ今回もだなと。
 最初に言いますと、個人的な思い入れは…まあ先に観たというのもあるかもしれませんが、「ヒストリー…」の方かな。家族の中でも「夫婦の物語」ってのは、やっぱり自分と比較して、クローネンバーグ監督の恐らく言わんとしていることには、概ね賛成だったので。
 そして今回もまた、大したことは書けやしません。いやー、ヴィゴの映画だったなと。それだけです(笑)。「キャリア最高の役と演技」という呼び声にも賛成。アカデミー賞がどれほどの権威かは知りませんが、ノミネートされることが名誉だというならヴィゴの主演男優賞ノミネートはそれに値しますし、獲れなかったのもまあこの人らしいっていうか…その年のこともよく知らないし、私には何とも申せません。もうとにかく、ようやった、かっちょいい、ヴィゴ、であります。
 で、ストーリーですが。
 単純です。
 熱意の余り、危険に巻き込まれていくヒロイン。謎のヒーロー。仄かな恋物語。
 この作品についての批判的なレビューの多くは、「道具立ても役者もカッコイイのにストーリーが単純すぎる」というもののように思われますが、道具立てがいいのはそもそも監督と脚本の腕だし、私は、これぐらい筋がハッキリしている方がいいと思います。いい役者に集中して見られるし、キャラも立つし、観終わってから色々考える楽しみもあるし。まあこれも結果論かもしれませんが。何より、前作同様、2時間ない。余計なことは描かなくていい…私は、短め映画推奨派ですので。(だから、じゃあLotRは何なんだ!と突っ込まないで) 
 病院に担ぎ込まれてきた少女の妊婦。子供は何とか取り出せたものの、少女は死んでしまう。立ち会った、ごく普通の助産師が、子供の家族を探そうとするうちに、怖ろしいロシアンマフィアと関わることに…
 彼女が出会い、そして何故か彼女を助ける、組織の運転手・ニコライがヴィゴ。
 いやー。
 渋い。スマート。ヴィゴって着痩せするタイプなんですかね。スーツが細身で、でも全く無理がない。どーしてあのお肉(脱ぐと結構たっぷんたっぷんしてるんですが)が、あの服の肩幅に収まるの!?とそればっか気になってしまいました。
 あと、ヴィゴの雰囲気が元々余りにも北欧系または東欧系(実際見た目通り北欧系ですし)なもんで、彼が立っているだけで、その街がロンドンとは絶対に思えない(笑)。どっちかというとニューヨーク(笑)。お金の単位が「ポンド」なのが出てくるまで(最初の方の、散髪料を払おうか?のくだり)、舞台がロンドンということすら忘れてましたよ!(笑)。それに勿論ワタクシ、裏社会の事情には疎いので、「へ〜ロンドンにもロシアンマフィアっているんだな〜」とか普通に思いました。(まあちょっと、ロンドンにロシア料理って、ちょっと違和感ありましたが←インド料理店は多いんだけどあんまし違和感ないのは何でだろ。)
 まあ確かに、あの容姿が、逆に、ロンドンには余りにも似合わない「別世界」としてのロシアンマフィアファミリーというものの存在を際立たせているのであって、そこらへんは監督の目のつけどころがいいなと思います。
 しかし、私には、ヒロインがニコライに惹かれるのは当然として(だって、映画のストーリーを抜きにしたって、あんなカッコイイ人が度々自分の前に現れて、あんな風にさりげなく優しくしてくれたら絶対惚れるでしょ!ニコライ、あんな女じゃなくてアタシにして!と観客は思うはずです!)、ニコライがヒロインに惹かれる理由がまーったくわからなかったーとです。
 まあ、若く美しい女性が、しかもあれほどひたむきであったら、ドラマ的には「何か」起こらないといけないってのはわかりますが。
 あとは、人の命を軽々しく、そして死体をゴミのように扱う稼業と、それとはまるっきり逆も逆、生命の誕生という瞬間を扱う仕事という2人の出会いの妙、というのはあるかもしれませんが、ちょっと理屈っぽいかしら。監督はそんなことは考えてなくて、単に被害者が、母子共に非常に危険な状態(臨月近くもしくは臨月での早期胎盤剥離)で担ぎ込まれるというシチュエーションが必要だっただけだとも思われます。
 「ヒストリー」同様、この作品も「家族の物語」と言えるかもしれません。悪の組織の家族(文字通り「ファミリー」(笑))、ヒロインの家族(伯父夫婦との擬似親子)、そして、強制的に作られ、完成する前に消えてしまった被害者の少女とその娘という家族。そしてどこかにいる、少女の家族。もっと思いを馳せれば、人身売買された女性たちそれぞれの、故国にいる家族。そしてニコライの…。
 背後にとても大きなものを(組織的犯罪、家族の愛、別れ、悲しみ…)持っていようと、主眼はあくまでもひと時のドラマ。それでいいと思います。そのドラマが、後日談を想像してみたり、色々考えたくなるぐらい、ちゃんと描かれていれば。
 そして幕切れ…今回も多くを語りません。同じ語らないにしても、まだ「ヒストリー」の方が、一応は普通にハッピーエンドと考えられますが、今回はもう、色々ですね。ニコライが本来あるべき道を採ったとしても、「一番マシ」というだけ。バッドエンドだったら…それこそ目も当てられない。しかし映画は、そこまでは語りません。あくまでも、描かれたのはヒロインとニコライの出会いにまつわる、クリスマスシーズンの数日間の物語だけ。ヒロインの成長や救済はわかりやすいとしても、ニコライの心の動きは、観客がそれぞれ想像してみるものなのでしょう。
 
 一応、悪のファミリーの方にも触れておくと、悪の帝王である「パパ」のコンプレックスの塊みたいな息子にヴァンサン・カッセル。久しぶりでした。彼が色々と感情の起伏の激しい人で、ニコライのお仕事は、運転・汚れ仕事・王子のお守りの三点セット。しかしこの坊やは重要な役割を果たします。ニコライと彼の関係が、映画が終わった後のお話の鍵を握っていると言えます。
 同じヴァンサンさんといえば、私が好きなのはヴァンサン・ペレーズさんの方でした。フランス系は紛らわしいわね!(「愛する者よ、列車に乗れ」よろしく!)
 あと、直接描かれていないのが狙ったのか単にあぶれちゃったのかわかりませんが、「孫の前では普通のおじいちゃんだがやっぱり悪の帝王バリバリのパパ」と、そもそも物語の発端となった「未成年淫〇」という、普通の悪事とは質の違う犯罪が、大事な点なのに、イマイチ繋がらなかったですね。台詞で十分説明されているし、ストーリーとして理解はできるのですが…。このパパの怖さは非常に短いシーン、短い台詞だけで表現されているので、最後まで生々しさが伴わなかった。それがいいことなのか悪いことなのかはわかりませんが。
 
 あとは細かい話。
 ヒロインの勤める病院で、ヒロインが出てくる出口にでっかく「LABOR WARD」だったか、「DELIVER WARD」だったか(レイバーのスペルは2通りあって、LABOURかも。普段は「労働」という意味ですが、陣痛という意味もあります。DELIVERは出産)。つまりあれは産科専門の出入り口ってことですかね。病院の一角に産科のみの出入り口がある!のか、それともあれは産科専門の緊急窓口なのか。まどっちでもいいですが、余りの目立ちっぷりにびっくり。
 英国では、出産の多くは無料の助産院で、日本と比べて、よっぽど医学的必要な処置が必要とわかっていない限り、病院で出産すること自体少ないと聞いていたのですが。勿論この作品のように、危険な状態になった妊婦さんは病院に運ばれてきます。保育器が当然何度か出てきましたが、英国の病院だと、ここにいる子たちはみんな凄い危険な出産だったんだろうか・・・と思いました。推測ですけど。
 ヒロインの伯父さん。元KGBって絶対ウソだろ!って思いませんでしたか?何かただの大口叩きの人っぽい。彼のことを口にするヴィゴの、ちょっと憐れむような表情。その謎もある程度終盤で解けるのですが。
 それと、ヒロイン、いい歳していつも伯母さん(伯父さんの奥さんですよね?)に起こされてますけど、私は女性なので、ヒロインの「お目覚め」のシーンなんか、全く同じ撮り方で2回もやってくれないでいいです(笑)。あれってファンサービスなんでしょうか??

 さて、話を戻して?「その点」ですが…
 皆さんも、「王の〇間」が「見たい」のではなくて、「ホントに見えちゃうの?」という方向の興味だと思うのですが、私もそうで、実際見てみると、
「何だ見えないじゃん。」
と(決して残念なのではなく(笑))。
 説明しますと、交渉ごとのために、お互い隠し事のないようにと、サウナに誘い出されたニコライを、屈強な2人の刺客が襲います。徒手空拳のみならず全〇!のニコライは、2人のナイフをものともせず、そして全〇であることなどまるでおかまいなしの(笑)、ガチバトルを展開。
 とにかく、ヴィゴの格闘能力の高さにただただ圧倒されてました(笑)。殺陣のプロが振り付けしていることとはいえ、やっぱりあの方は…強すぎですよ!(笑)
 滑りそうだしな〜。血でぬるぬるするしな〜。「何で大の男2人+ナイフ2本で勝てないのかな〜」とか突っ込み入れつつ観てました。
 あと、「巻き込まれた他の客が可哀相」とも思いましたし(笑)。誰か怪我してなかった?運の悪い…
 「ベスト30」入りは、もう…裸であの強さだからですよね〜。特に他には何も…
 全身タトゥ!が、濡れた全〇の肌に…なんですが、そのへんは、そのまんまペンのブルーブラックインクの色みたいだな〜と、余り生々しい感じはしませんでした。(外国では紺色のタトゥーは元々紺色のインクで入れるんですね。日本では文字通り「墨」を入れても皮膚の下では青っぽくなるので「刺青」と書くのですが。これを「いれずみ」と読むと芸術として入れている方々が怒りますので、「ほりもの」と読みましょう。)
 それに、結構、お肉、たっぷんしてますよね?
 あれ凄い微妙な量ですよね〜。「デブ」でもないけど引き締まってもいない。結構「膨らんでる」というか「やわらかそう」。ホントにあれが何であんなにスーツにスッキリ収まるんだ!?ガイジンの身体ってマジック!?
 あと、私には、「全〇シーンでぼかしが入ると結構冷める」という困った性向がありまして…
 うーん、ほら、「見えちゃったら隠せばいいや」なんて甘い気持ちでやるな!という、意味不明な批判をしてしまう(笑)。
 …気にしてない割にはこのシーンの感想が多いような気がしますが(笑)。私が言いたいのは、「やるならやれ!」ということですね。(ちなみに、「インディアン・ランナー」はモロばっちり見えだったので、ボカシでした。)
 そこへいくと、この作品では、あれは…技術ですね〜(笑)
 映画の撮影ってのはカメラが何台も回ってると思うんですが、その全てのバージョンをチェックして、
「あっここはバッチリ映っちゃってるな〜」
「じゃここ、別のアングル探そう」
なーんて、各バージョンを繋いで、ああいう、「見えそうで見えない一連の格闘シーン」にしているわけで…
 野郎のハダカを(笑)、おっつぁん野郎たちが熱心に「見えちゃってる・ちゃってない」判定と編集をしている姿ってのは…異様というか滑稽というか(笑)。真面目に想像しちゃいけません。

 ちなみに、ヴィゴは刺青をしてもらうのに機械彫りでしたが、あれは針の束が猛スピードでダダダダダッとピストン運動をする機械です(針の太さや本数の違うアタッチメントを交換できるようになっている)。インクをつけた針の先を肌に繰り返し打ち込むわけですね。手彫りでも仕組みは同じで、筆のような軸の先に針の束がついていて、手作業で何度も刺していく。妹尾河童『河童が覗いたニッポン』によると、機械彫りと手彫りの違いは、手彫りの方が「遠目の迫力がある」んだそうです。劇中でのヴィゴの刺青が「描いた」ように見えるのは、勿論本当に描いたものなのでしょうが、「ああ、あれは機械彫りだからなのね」なんて、勝手に知ったかぶりをしてみるのも一興。

 お付き合い有難うございました。
posted by 高野正宗 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | おでかけ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月26日

ヒストリー・オブ・バイオレンス

 
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 DVDでやっと観ました。
 ヴィゴ主演の作品は、観るには結構心の準備が要る(笑)。オッサンはオッサンなんだけど、脱いだらというかシーツの下に入ったらというか(どうして外人さんのベッドって、上も下もシーツなんでしょうか)、あら不思議、という人なので。
 私は映画に詳しくはないし、クローネンバーグ作品を他に観た事があるわけでもないし、しかも評価の高い作品に今更私が何を言う必要もないが…。
 うーん、やっぱヴィゴはいいわ。
 「二面性」をやらせたら天下一品ですね。
 LotRでも、いざという時やたらめったら強い、というか、王様とは思えない凶暴な血まみれ面をして下さる王様と、2000歳!年上の恋人の前では余りにも可愛らしい青年の両方を見事に出した(87歳とはいえ、人間の3倍寿命のある種族なので、単純に3で割ると30前ってことにはなるし、監督も「まだ青年なんだ」と言っている通りの演技でした)。
 今回も、基本的にはそういう演技なんだけど(ついでに言うと、ヴィゴといえばの頭突きも健在だった(笑))、舞台が現代で、暗い過去を持つ男が現在をどう守るかという話。繰り返すけれど、「弱さ」の見せ方が上手いんですよね、ヴィゴは。LotRでも、いい歳のくせにあれだけ弱さ見せまくってうざくないキャラも珍しいですからね(笑)。
 好きな俳優さんなのに、ラヴシーンを演じている時ですら好きっていう、もう正に病がコーヤコーヤ星、じゃなかった、病膏肓に入るってやつでしょうかね。だってねえ、どうしていい歳のオッサンなのにこんなに可愛くなるんですか。
 話を戻して。
 暴力シーンだのあらーんなシーンだのを今のキャリアでやる必要はないという意見もレビューには見受けられますが、役者である以上別にいつどんな役をやったっていいでしょう。逆に今彼の「インディアン・ランナー」を観たって面白いかもしれないし。(勿論、他の恋愛物でも色々と可愛いし。)
 暴力的な過去を封印したはずの男が、過去を知る者たちに追われて、また暴力で現在を守る。
 バイオレンスシーンとえっちシーンはまあ苦手な人は飛ばしてもいいけれど(私も、つい視線がテレビの斜め上に行っちゃいましたが…)、作品自体が短いのでうっかり飛ばすと話がわかんなくなります(笑)。
 それに、どっちのシーンもいい具合でリアルで、見せているようで見せすぎてない、不思議な監督ですね、クローネンバーグって。赤裸々なシーンであっても、ちゃんとその必要性が伝わってくるもの。だから、見せられてる、っていう気はしない。
 それに、もしああなったら、私も奥さんと同じ行動を取るだろうな〜と思ったし。
 …夫婦なんてあんなもんよ〜(笑)。
 今更、知らなかったことを知ったからって、現在を変えるのもめんどくさいし。何より、もう家族なんだし。ある意味惰性だし、保身だし、絶対なの。
 家族っていうのはもう作って、持っているだけで完璧なの。
 それを失わないためにまた暴力に訴えるとしても(但し、勿論これは暴力推奨映画ではありません)、力で勝つ能力があるのならそれを使うとしても間違いではない。いかに避けられないことか(いかに相手がとんでもないヤツか)、いかに家族が唯一の存在かを、時間をかけずに見せ、主人公の戦いを淡々と描く。何を声高に訴えるわけでもないですが、やっぱり暴力(人殺し)のやるせなさも見せているし、未来の明るさも、ラストシーンの家族それぞれの行動が暗示しています。
 結局の所、暴力も、愛も、「理屈じゃない」ってことなんですよ。
 結婚したり、子供を持ったことで一番知ったのは、理屈ってもんがいかに現実の前ではどうでもいいものかということと、「現実をそのまま受け入れるのが最初」ってことでしょうかね。あんまり、「あるべき姿」みたいなものに拘らなくなった。私はそれを知るのが遅かった気はするけど、世の中には自分の思い通りになることばっかりじゃないとか、なるようになるとか、そういうことは、結婚して自分が親の世代になったことと、更には実際に親になったことでわかったかなあ。どぉーしようもないものは、もう、どぉーしようもないんです(笑)。
 主人公も、過去に負けて再び銃を取ったわけではないと思います。過去からは逃れられないという現実を受け入れたからこそだと。過去を振り払おう、消そうとするのではなく、恥ずべき過去であろうと、その過去を再び持つ人間として生きるために、執拗な敵に銃を向ける。それは形の上では敵を消すことになるだろうけど、もう彼は家族に自分の過去を隠そうとはしない。それが彼が正しいと思い、選択した人生。
 家族もまた、彼が何をして帰ってきたのかは、わかっているはず。
 あと、私は、いい映画には長い時間を必要としないと思うので、本当に本筋だけどばばーんと行って1時間半弱のこの作品、描かれていない部分は「省略した」ってことで全然問題ないし。
 え?LotRですか?いやあれは、原作のあるもので、その原作が長いからしょうがないんだよ。原作通りにやったら大河ドラマでも足りないし(笑)。

 ああ、あと、エド・ハリスとウィリアム・ハートを敵役に配しておきながら、登場時間短すぎでした(笑)。
posted by 高野正宗 at 19:16| Comment(0) | TrackBack(0) | おでかけ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月09日

P.D.ジェイムズ再読H―『原罪』上・下

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 私が持ってるのはポケミス版なんですが…
 上巻の帯には「P.D.ジェイムズの最新傑作」。
 「最新」で「傑作」なんですね。何か欲張りな惹句です。
 下巻の帯には「P.D.ジェイムズの集大成」。
 まだシリーズ終わらないんですけど集大成です(笑)。
 …まあ確かに、この時点での「集大成」ではあります、っていう、エポックメイキングな作品ではあります。

 しかーし!
 シリーズの主人公・ダル様ファンとしては、正直「ダル様度」が低く、ちょっと食い足りなかったりもします。
 いや、物語としては凄いんです。やっぱりジェイムズ女史、そして又も新たなステージに入ったぞジェイムズ女史、なんです。
 この、エポックメイキングというか!ただの推理小説じゃないというか!深い!物語を!
 100%解説できりゃ、世話はないんですが…
 しかーし!
 今回のお話は、どちらかというと、捜査する側の物語というよりは、被害者をはじめとする事件の関係者側のもの、に思えます。
 描写の量を数値にするなら、警察側3、関係者側7、ぐらい(あくまでイメージですが)。質的にも、私の中では4:6ぐらいで、関係者側のドラマの方が記憶に残る感じ。
 個人的には、今までのようにダルグリッシュの視点で、彼の心理描写がじっくりがっつり!な方が好きなんですが。
 しかも、警察側では、今回も、ダル様というよりは、相変わらずケイト目立ってます。プライヴェートでの変化がありまして…。
 このケイトと、そしてマシンガム(理由は不明ですが転属しちゃったらしいです)の後任としてやってきたダニエル・アーロン警部の比重が大きい。このアーロン警部は、ケイトともマシンガムともまた違う、ユダヤ人でユダヤ教徒、警官という仕事が家族には恥としか思われていないという、これまた複雑な人物。

 さて、今回の大きなテーマは、訳者あとがきに書いてあるんで、言えません(笑)。
 所謂、推理小説の枠を超えた…とか、ありがちな解説をされちゃうような、大きなテーマなんですが。
 普通に読んでたら、謎が解けるシーンまではテーマなんぞわかりません。いや、一応タイトルで気に留める読者もいるかもしれないけど。
 普通に読んだので、ほんっとうにえんえんと、関係者のドラマが続いて、正直「進みがのろい」と感じました。キャラ作りと描写の上手さは今回も楽しめるんですが。そもそも、最初の殺人が起こるのも上巻のラスト近く(自殺死体は最初の方に登場するので「死」そのものはさっさと描かれるのですが)。
 ちなみに、被害者は今回も、超嫌われ者です(笑)。創業者から出版社を引き継いだ社長なのですが、強引な経営改善策(由緒ある社屋の売却計画やリストラ)は、創業者一族を含む理事会からも一般社員からも恨みを買っている。おまけに恋愛面でもかなり問題アリな男で…
 そして、今回は警察側も、ダル様ではなく、ケイトやアーロンの物語が長々と。一方ダル様ときたら、「警視総監の秘密の用事でどこどこへ」なんてぇことが堂々と書いてあって、不在の場面もある。まあそれだけ、ケイトはしっかりした部下だし、「ダルグリッシュシリーズの世界」がすっかり確立されていて、それぞれがそれぞれに自由に動いている部分があって、あくまでも、物語で扱う事件に関わる部分を切り取ったものが個々の作品、というスタイルになってきたということなのでしょう。
 勿論、ダル様も、登場場面が以前より少ない感じはしますが、要所要所のかっこよさは健在です。ケイトのよき上司であり、時に厳しく、時に優しい刑事。証人となる少女とのやりとりは見ものでした。また、年齢が20歳近く違うケイトからみても、”対象外”ではないと仄めかされているような描写もあります。
 まあしかし、「のろい」感じはしますね、本当に。ほぼ同じ分量の、これも大作『死の味』の方が、もっと警察側の比重が(ダル様、ケイト共に)大きかったし、もっと、途中で退屈しなかった気がする。今回はちょっと、テーマが予めわかっていないと(いや、わかってちゃ面白くないんだけど)、途中がちょっとだれるかも。
 さて…
 ここで困ってしまうのは、今回はこれ以上はどこを切ってもねたばれになりかねないという(笑)。
 ああ、あれも言いたいっ。これも言いたいっ。どこがどういう風に凄かったか説明したいっ。
 でも・・・しちゃ駄目なんですね(笑)。
 今回ほど、こんなにいい作品なのに何も言っちゃいけない!ともどかしい作品はありません。
 振り返ってみるとこれまた実に緻密な構成の作品。だらだらと描かれていたかに見えたあーんなことやこーんなこと、あそこやあそこの会話が、後から―というのは、本当にラストでガガガッと全てが解けるので―ラストに来て、「あー!」と。関係者側のドラマも、全て、後になって、「ああああああ・・・」とわかる、納得する、効いてくる。最後で、そりゃなしだろー!な感じ。
 そして、何とも皮肉な結末・・・
 …あー、説明したいっ。したいのは山々なんですがっ。
 ただ、個人的に1つ言いたいのは、この作品で示されるものが、果たして推理小説という形でしなくてはならなかったことなのか、というお決まりの問題がこの作品にもある、ということですね。
 ジェイムズ女史の場合は、そういう問題は単純に「推理小説と文学の融合」と説明されてしまうことが多いんですが…
 いざ、正に、何かを問うための(と、女史自身が考えていたかは兎も角、そういう形になっている)作品を前にすると、よくわからないのです。
 しかも、今回の犯人が「どうしても許せない」と思ったこと、犯人が被害者にあると考えた「罪」は、ぶっちゃけ、ヨーロッパ人でない我々にはちょっとわかりにくい面もあるし。
 いくらそういう理由だからって、アナタ、そこまでする?と思う部分もあるし(誰のことかは読んでのお楽しみ)。
 敢えて、私でもわかるような単純な割り切り方をしてみると、やっぱり、同じ罪でも人によって受け取り方は随分違うのだなあということ。ある人は、それを死に値すると考えて被害者(その罪においては加害者)を殺す。一方では、その罪すらも憶えていない人間もいる。また或いは、その罪を罰することを良しとして加担する者もいる。…
 罪は罪なのですが、それが与える影響は実に様々。
 ラストシーンをどう考えるかは人それぞれでしょう…。
 と逃げてはいけないので私の感想を1つ書いておくと、うーんやっぱり、××さん、いくら自分も〇〇だからってそうする??と納得のいかない部分もありました(ねたばれになるので伏字にしかできません)。ただ本当にこれは、日本人にはちょっと実感に乏しい話ではと・・・。
 私が納得のいかない結末だったのは、確かこの作品だけ…のはず…(以後、最新作の1つ前の『殺人展示室』まではこれから再読なのですが)
 しかし、一方で、その、人それぞれになりがちな問題について、明確な答えを示しているのがケイトなんですね。ケイトが警官として、一本筋の通った神経というか根性を持ってこれからも進んでいくだろうことは明らかです。1人、こういう揺るがないキャラクターがいると、読んでいて安心しますし、作品自体の「格」も失われないと思います。
 ただ、結末から遡って全体を見直すと、推理小説としてもやっぱりよく出来ています。情報をいかに違和感なく小出しにしていくか、人間ドラマと伏線を兼ね備えた展開、動機の意外さ(ねたばれぎりぎり…)。あんまり深く考えなくても、まず推理小説として、読んでいる間楽しい時間を過ごさせてもらえるのは、頭の悪い私のような読者にも有難いことです。
posted by 高野正宗 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月29日

F.M.E.5―それぞれの…

 と、映画版「ロード・オブ・ザ・リング3部作について色々書いてきた。
 繰り返しになるが、私はこの映画が大好きである。職人魂は私のドツボ。この映画は、映画ではなく、本当に中つ国へのタイムスリップだと思う。つまり、ファンタジーではなく古代ヨーロッパの時代劇だ!と思うのだ。そしてこの感想は、「現実の歴史として描こうとした」というスタッフの、原作への愛情にも一致する。
 DVDで見直すたびに、タイムマシンが壊れて、1週間以上も現実に戻ってこられなくなる(笑)。世の中の娯楽媒体が概ね「異世界へのトリップ」だとすれば、この三部作は最高の乗り物の1つに間違いない。

 この作品を愛している限り、私は、「私の追補編」「私の未公開シーン」の中に居続ける。
 ファンはみんな、「それぞれの追補編」、「それぞれの未公開シーン」の中に、今もいるのだ。 

 言い訳ではない。既に書いてきた批判部分については、あくまで部分であって、私なりの指摘とか―――言い換えれば繰言なのである。
 他のキャラクターのファンから観れば、勿論そのキャラクターを通していくらでも批判のしようがある。
 ちょっと考えてみても、あのキャラのあれはどうだろうかとか(笑)、出番減りすぎじゃんとか、そもそも存在すら消されてるじゃん!とか…それこそ無限に。
 つまりは、キャラクターの数だけ繰言があるのだ。
 「それぞれの繰言」もまた、楽しいのだ。

 以後、また思い出したら書く。
 ファラミア殿下と並んで、勿論王様だって、中の人だって好きなのだ。

 
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 文庫の10巻セットも出ましたね!本当に、『追補編』が新版の文庫になったのは嬉しいことです(旧版の頃は実は最終巻に入っていたのですが)。
 そうそう、私、先日、「読みつぶし用」にと、古本屋に走って10巻全部買いました(笑)。
 
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2009年09月28日

F.M.E.4―人間イッパツ大逆転

 子供が寝ている間に、第三部を、主にデザイン・スタッフのコメンタリー字幕(音声は日本語吹き替え)で観た。(DVDってこういう「技」が出来て楽しいですね(笑))
 昨日の日曜の夜は、第二部の特典ディスク2枚を好きな所だけ観た。本当はその後、本編も観ようかと思ったのだが、やっぱりあの、原作とは似ても似つかぬファラミア殿下を観るのが辛い気分で(観られる気分の時も勿論ある。現に先週22日は三部作全部観たわけだし)、丁度もう寝る時間でもあったし、やめて寝た。
 で、第三部観て…
 …やっぱり、観れば観るほどひでえ映画だぜ(笑)
 いやこのへんの、裏返しっていうか、矛盾というか、愛憎、相半ばするっていうか…そういう気持ち、わかるかなあ(笑)
 基本的には大好きな映画なのよ。既に書いたように、画面がとにかく素晴らしく、「スクリーンで」観られるだけ何度でも観なくてはいけないと思い、毎週劇場に通った。「大画面で!」ということにこんなに拘った映画は他にない。
 内容においても、殿下の件では批判の気持ちは変わらないが、私は、監督(以下PJ)の意図はかなり正確に受け取っている方だと思う。原作と違う所が全部いけないわけじゃないし、むしろ、殿下の件を除いた他の全部は、PJの「改変」に大いに納得しているのだ。例えばヘルム峡谷にエルフの援軍が来る所など。原作と違うからといって、人間とエルフの同盟を描くのにああしたのは正しいし、本来死ななくていいはずのハルディアを筆頭に、エルフがバタバタ(人間と同じように!)死んでいるあの戦いで、いかに指輪戦争が深刻なものかを知った。もう正にPJの狙い通りの奴なんである、私って(笑)。

 以下、第三部のねたばれを大いに含むので、未見の方は自己責任でお願いします。
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star三部作のラスト。これぞ映画!
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2009年09月26日

F.M.E.Extra1―Viggo's works

 RotKのAragornのcoronationでは、勿論とっても幸せになるのですが、そうなるとやっぱりまた、レンジャー時代のきったない彼も観たくなる(笑)。(以下不自然に横文字なのはネタバレ回避の為です)
 これって、所謂「無限ループ」って言わないか…言うよね〜。
 あの、初登場の「パイプぼわーん」(遠景がほとんど映らないのでわかりにくいですが、流石はStriderというだけあって、長い脚を台に投げ出している!)からしてもうカッコイイ。そしてFotRの彼の出番は全部カッコイイ。Weathertopでの戦闘シーン(これがViggoの撮影初日!生ける驚異!)。そしてムフフの再会(それを言うたらBoromirとも再会に近いが…彼が生まれた頃には既にソロンギルはGondorを去っていたので惜しい所である)。SEEで復活した、カラス=ガラゾン入り前のハルディアとのElvish口論もカッコイイ。そしてそして、まあ何たって終盤である。1対100の戦いを前に、身体の前に剣を立てたあのポーズは、もう全世界何十万人を夢に誘ったことか。
 …と、特典版と本編を、早回ししつつ観終わる。
 Viggoは、今では有名な話だが、俳優としては出演作品数が年季の割に多いことと、写真家・画家・詩人・歌手でもあるということ。
 「俳優兼ナントカ」の場合、大抵は俳優以外の部分はズッコケていることが多いのに対し、実際、特に彼の写真は素晴らしい。
 当時、私はViggoの写真集兼詩集(被写体が彼なのではなく、風景、僅かの人物、そしてコラージュと彼自作の詩)は、ほぼ全部取り寄せて読んでいた(ついでにCDも1枚参加しているものがあり、買った)。
 詩は所謂現代詩というか象徴詩なので、日本語のことばに訳すのは難しく、ただ英語の語感で味わうしかないものである。内容は、面白いっちゃあ面白い。
 コラージュはとても素晴らしいし、映画の撮影風景を撮った写真は、数少ないがどれもとても芸術的かつ温かい。風景や室内を撮った写真は、独特の切り取りセンスがある。早い話が私にはかなり好みだ。アーティスティックなものあり、癒し系あり。
 『Hole in the sun』収録の写真なんかは、個人利用に限ってだが、カラーコピーなりスキャンなりして額に入れて壁にかければ、自分だけが出自を知っている、ちょっと洒落たインテリアになりそうである。
 写真集は旧作も新作もまだ、流石米国で出版なだけあってAmazonでは結構手に入るようだ(ちなみに多くの版元であるPerceval PressはViggo自身の会社である)。
 ↓現代アートっぽい色使いのカットが多い気が。
 
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 ↓これの付録のCD、透かしてみると何故か波打って見えて、案の定、PCでしか再生できず…
 
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 CDはこれ。
 Pandemonium from America
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 「イースタン・プロミス」、映画館に行くことができない身としては当然まだなので、近々レンタルの予定。
 ↓近々観る予定。スペインが舞台か…Viggo、スペイン語もネイティヴに近いからな…でも台詞英語なんだろうな…
 
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2009年09月25日

F.M.E.3―××との戦い

 …と、下の記事でえらそーに言及しているデネソール殿ですが。
 第1部FotRを観ながら、この名前がどうしても思い出せない時がありまして(笑)
 「何だっけ…何だっけ…。」
こういう時は連想で、周りから攻めて行こうと。
「えーと、アナリオンの家の…エクセリオンの子…駄目だーっ!」
とか、「センゲル」だの「エオムンド」だの既に前世代の人とか(笑)、その他その他、特に関係はない人名ならどんどん出てきたりして。
 あれですね、「忘れてる」と同時に、
「思い出したいこと以外は全部思い出せる」
という状態に更に苛立つと。(笑)
 来た!来た!これが老化との戦いだ!
 何かもう本当に、まあ今じゃ何だって記憶飛んでますが、この作品でもまた、記憶の穴を埋めるというエキサイティングな作業を楽しめましたよ、ええ(笑)
 「ええっと…グロールフィンデル、じゃない、ハルディア!」
「誰だっけこの…えーと…」
ぬああー!と頭をかきむしること多々。何かさあこの、人名が多くて、下手に脈絡なく憶えてるってのがよくないんだな。
 あと、単純に記憶の穴以外に、顔のアップも映るし台詞もあるけどハテこの人は役名あったっけ、という、元々知らないケースもあったり。あの、ミナス・ティリスで「執政殿下はこうあることを予知しておられた!」は、あれ一応イムラヒル大公って設定だったような…またこれもひどい改悪だが。この人はフィンドゥイラスの弟、殿下の叔父で、死地に赴いて瀕死の重傷を負った殿下を救出して連れ帰ったのもこの人。この人がエルフの血を引いているのだから、フィンドゥイラスの子である兄弟もエルフの子孫なんだな…。しかも、この人の娘がエオメルの妃になり、エオメルの妹が殿下の奥方なんだから、エオメルと殿下は義理の従兄弟かつ義兄弟なんだ…。どんどんリダーマークに取り込まれてる執政殿下(笑)
 その他結構、あれ?な状態で名前だけ使われていたりするから(エオサインとか)いっとこまも油断ならん((c)みなもと太郎)映画だ。 
 ああそういえば、ベレゴンドなんて存在自体が映画にはないよな…幸薄い殿下の、数少ない幸せの一つがまた消えてる…(涙)
 何かこうね…
 映画からはボロボロ零れ落ちてるあれやこれやを思うたび、「個人的未公開シーン」は増えるばっかりだよね(笑)
 参考)中つ国Wiki(リンクはイムラヒル大公の項)
 http://arda.saloon.jp/index.php?%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%83%92%E3%83%AB
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F.M.E.2―ゴンドール・ファミリーを悼む

 (以下、ややネタバレあり、原作と映画を知る人向けのようでそうでないようでもあり、微妙なので自己責任でお願いします)
 さてさて。
 LotR第2部二つの塔(TTT)だが、…ここで個人的に問題にしたいのは、概ね好評だったこの映画の中では珍しく批判の多かった、執政にして大公デネソール公の次男殿下、後の執政にしてイシリエン大公ファラミア殿下の「改悪」である。

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star映画で見て感動したので買いました。
starやっぱそうだよね。
star劇場公開もSEE版で観たかった・・・

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2009年09月24日

F.M.E.1―”ひとつの映画”

 9月22日、何故かふと思い立って、物凄く久しぶりに「ロード・オブ・ザ・リング」3部作SEE(完全版)DVDで観た。
 実に、5年半ぶりである。
 それなのに感動は全く変わらないことに驚く。素晴らしい映画である。
 というわけで、物凄く今更だが、自分でもびっくりするほど憶えていることあり、あらためて考えたことあり、とにかく思い出せるだけ浚い出してみようという、6年半後のロード・オブ・サ・リングである。
 久しぶりに新しいカテゴリ「From Middle-Earth」と銘打ってみたものの、私は映画第一部後に原作の第二部からとにかく追っかけて読んだ組なので、余り偉そうなことは言えないし、簡単に言えばもうこれだけ経っちゃっての「繰り言」である。
 また、ネタバレはバンバンしているし、原作と映画両方を知っている方を主に対象にしている文章なので、原作も映画も知らない、もしくはどっちかしか知らない、という方は、もし興味を持って下さったならとても有難いが、「続きを読む」以降がある文章の場合は、「続き」は自己責任でお願いする。

 今日は、第3部RotKの特典DVD2枚を(時々早回ししながらだが)観た。
 ああ、私はやっぱり5年前(第3部公開時)から、魂はミナス・ティリスに移住しちゃってんだな…とあらためて思った。
 何でこんなにこの映画が好きなのか、と言ったら、一言で済む。
「とことん本物作っちゃう凝り性映画が、正に私のドツボ」
だからだ。
 勿論、フルCG、合成はもとより、錯覚を利用した古典的手法やビガチュア(でっかいミニチュア)といった「テクニック」もあるけれど、建物の一部は完全に本物を作っちゃうとか(エドラスの黄金館とミナス・ティリスの玉座の間、あれは神だ…)、衣装も武具も馬具もみんな本物だぜというあの凝り性も凝り性なとこね(笑)。あれあのまんま取っといて展示でもしてくれたらよかったのにね。でもセットはもう全部ないし、小道具大道具も倉庫の中。
 (余談だが、偶々2003年に新婚旅行で訪れたロンドンの自然史博物館で映画LotRの展示をやっており、詳しい展示解説や実際に使われた道具が見られたのは正に奇跡。小道具が私の背より高い大きな透明な箱の中に詰めてあったのだが、そのいちばーん底の方にエルフの3つの指輪のうちの1つがあった…(笑))
 元々歴史好き、ヨーロッパ中世好き、イギリス好き、だし。
 この映画は私にとっては正に「ひとつの指輪」ならぬ、「ひとつの映画」である。
 普通の寿命からいったら私はまだ半分にも達していないのだが、どうもこれが結局は私の一生の一本になる気がする。何故なら、私は映画を観るという趣味はなく、映画館には滅多に行かない人間だからだ(答えは簡単、出不精でケチだから!)。まあそんな人間の「一生の一本」なんて説得力のないことこの上ないけれど、私の中ではそれで大満足。
 まあ、ものすごーく、マニア的に、フェチ的に、細部まで、そして出演していた方々の他の作品まで買い漁って観てしまったぐらいハマったという事実そのものに比べれば、この作品が丁度3年に亘ったが故に私の人生の大きな転換期を含んでいた、なんてことは瑣末事である。
 結婚する前の、自由で子供だった私。結婚を控えた私。新婚の私。(そしてそうでもない(笑)今は、子供を持った私。)
 そういう時期が、第1部、第2部、第3部それぞれの記憶と一緒になっている。
 しかもそれは、ただ「その時期にやっていた」からではない。
 「その時期は毎週観ていた」からだ。
 レディースデーという便利なものがあり、毎週水曜日は女性は1,000円だから(元が高すぎると思うけど…)、毎週毎週観た。
 「この映画は、上映している限りは、一度でも多く映画館で観ておきたい」と思ったから。
 映画館で観ることにこれほどの意義がある映画を他に知らない(だから、アンタそんなに観てないでしょって(笑))。ニュージーランドの風景=中世ヨーロッパの風景=中つ国を、一度でも多く、スクリーンで観ておきたい。それに実際、何度見てもいつも楽しみになるぐらい好きだった。
 台詞を憶えるぐらい、という喩えがあるがその通りだったし、次の回が始まるまで外で音が聴こえてくるだけでどの場面だったかわかるし、なのに何度観てもやっぱり楽しかった。
 第1部はまだそれほどでもなく、10回観たかどうか。だが第2部は10回以上、第3部は最低14回は観ている。
 第2部は、続きが待ちきれず、先行上映(初日1週間前にレイトショーで1回上映する)を、4時間並んで観た。
 それは、今は無き「渋谷パンテオン」で…
 あの映画館がなくなったのも、私の中で渋谷の終焉というか…
 私にとっての「映画」はやっぱり「渋谷パンテオン」と「渋谷東急」だったなあ…と思う。(現在、「東急」の方はツインタワーだったか、渋谷の外れの方に移っている)
 主な映画はほとんど、あの「東急文化会館」で観た。この建物に1階にパンテオンと、他の階に東急が数館入っていた。そして最上階は「五島プラネタリウム」である。ちゃんとしたドームタイプのプラネタリウムだ(ここも無くなる直前に行った)。しかしこの建物そのものが東急の資金難もあって売られたとかで、取り壊された。若い方のために言い添えておくと、現在の副都心線の駅が跡地である。
 そういうわけで渋谷も、小さいスクリーンばかりではないものの、何だか世の中全体がシネコンになっていくようで淋しい。(渋谷TOEIもそんなに大きくないしな…やはりパンテオンが懐かしい…)
 話を戻すと、毎週水曜、会社の帰りに渋谷で観て帰った。始まるまで、コンビニのおにぎりをかじっていた。これを「ロード・オブ・ザ・リング難民」と私は名づけた(笑)。旅はその日の朝から始まっていたのである。
 週末に入籍を控えたその水曜にも、第2部を観ていた。
 第3部の1回目は結婚して1年になろうとする頃の2月に旦那と。丁度その頃私は1月の誕生日に風邪を引いてから色々ちょっとおかしくなって所謂ドクターショッピングみたいな状態になっていて、その日もものすごーく頭痛がしている時にシネコンの最前列(笑)。あのちっこいスクリーンで最前列って、ゴラム等身大よ(笑)。そしてますます頭痛は激しくなり…今では懐かしい思い出(笑)
 まだこれから第1部、第2部の特典と、第2部のSEEをまた観直したいんで(アラゴルンとエオウィンの切ない絡みがいいんだ…)、こないだから通して、今回は7泊8日ぐらいの旅かな(笑)
 思えば、このブログの方を始めたのは2004年7月末。P.D.ジェイムズ同様、「大好きなのにブログ以前だから採り上げてなかったもの」だから。ブログの方にもちょこちょこと何かまとまっていないものは書いた気がするのだがかなり昔のことだし検索がめんどくさいので探さない。あくまでも、思い出せるだけ、思い出せる時に書く。
 ただ、ひとつだけ確かなのは、死後の世界はミナス・ティリス希望(笑)。
 多分死んだらまっすぐあの白い都に行けそうな気がする(笑)。
 そこにはまだ、長命を約束されたドゥーネダイン、エレスサール王陛下も、執政にしてイシリエン大公ファラミア殿下もいらっしゃることでしょう。

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2009年09月13日

P.D.ジェイムズ再読G―『策謀と欲望』

 
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 ダルグリッシュ警視第9作。ポケミス版では1冊本ですが、やや手に入りやすい文庫本では上下分冊になっています。
 前作で素晴らしいドラマを見せてくれたミスキン警部ですが、今回はお休み、というかお留守番なので出番なし。
 何故かというと、『不自然な死体』、『黒い塔』に続き、又もダルグリッシュはプライヴェートなお出かけで事件に巻き込まれてしまうのです。もう、ダルちゃんったら!(笑)
 『不自然な死体』に登場した、ダルグリッシュの最も親しい女性である叔母が引っ越した先で亡くなり、ダルグリッシュはノーフォークの寒村へ。『黒い塔』同様、遺品整理のため、死者の家に残ることになります。
 さてこの寒村、近くの原子力発電所を巡って、様々な思惑が交錯している真っ最中。ダルグリッシュは複雑なシチュエーションに飛び込むことになってしまうのです。発電所の所長、その姉、反対派の青年、私生児を抱えたその同居人。
 そして今回も、やっぱり、「研究所内でのドロドロ人間関係」が(笑)。出世争い、恋愛、脅迫、過去の悲劇…
 もうほんっとに、「研究所」好きねえ、ジェイムズ女史(笑)
 更には、今回の被害者も、めっちゃ嫌われ者の女(笑)。発電所のお局様的管理職。
 彼女は、習慣である夜の水泳の途中で絞殺されていた。しかも、第一発見者はダルグリッシュ!
 ダルグリッシュじゃなかったら犯人扱いなシチュエーションです(笑)。
 折しも、”ホイッスラー”と呼ばれる連続絞殺魔が世間を騒がせていた。同じ手口。新たな犠牲者か?…
 
 今回は、長さは前作ほどないものの、”盛り沢山”と言えないこともない内容。いかにもな殺人鬼を出してあって、旬なネタである原子力発電所、過去作品のキャラクター(ダルグリッシュの叔母)再登場、『黒い塔』のような海辺の寒村=限られた住民、「研究所ネタ」…
 ギュギュッと充実、被害者もちっとも同情に値しない嫌な女(笑)。読みでありありの1作です。
 とはいえ、色々と「こういうのもいかにもでしょ?」と女史が笑いながら出しているような部分はあくまでも要素にすぎず、骨格は正にジェイムズ作品。キャラクター1人1人の事情、人間関係を丹念に描き、ダルグリッシュに深く考えさせ、少しずつ少しずつ核心に迫っていく。
 読み終えてみると、キャラクターの配置が実に見事だったと、今回も首を振りながら溜息です。殺人事件という本筋の他に、平行してというか裏でというか、別に1つ2つのプロットが進行する(ダブル、トリプルプロット)のが今では女史の作風と言われていますが、前作あたりから現れ始めたこの傾向は今作でも引き継がれ、思わぬ結末を迎えるキャラクターや、これまた思わぬ活躍をするキャラクターなど、最後まで眼が離せません。
 そして大詰め、ダルグリッシュはまたも…
 
 個人的には、プロットと同時に進行している、地元警官のサイドストーリーがなかなか粋で好きです。余りにも現実的すぎるほど現実的、ストイックというより普通に真面目、冷徹、冷静、そんな女史ですが、温かいドラマを書かせても見事。前作といい今作といい、本筋と絡みつつもそれ自体印象深いドラマ(ほんっとに、大盤振る舞いですわ…)も楽しめます。
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2009年09月12日

P.D.ジェイムズ再読F―『死の味』上・下

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star下巻だけ繰り返し、という味わい方

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 さあ、長くなってきましたよ(笑)。この作品から、ポケミス班でも文庫版でも上下分冊が普通になっていきます(笑)。「重い、長い」ジェイムズの始まりです。
 でも、長いけど楽しかったですね。下巻を開いてなおワクワクしますね。

 この『死の味』は、今回読み返して、そうだそうだ!何でこんな大事な作品をほとんど内容忘れてたんだろう!とちょっと自分に腹を立てました。
 マシンガム警部に続き、新たにダルグリッシュの班に加わるのが、女性警部ケイト・ミスキン。
 そう、このミスキン警部、推理小説の中で私が一番好きな女性キャラクターなのです。(ちなみに一番嫌いなのはレジナルド・ヒルのダルジール警視シリーズの、部下の妻エリー・パスコー。賢しらで最低のでしゃばり女)
 本当に好きで好きで、こんなちっぽけな私の感想の中なんかに固定してしまいたくなどないぐらい、様々な言いたいこともイメージもあるのですが、やると決めたからにはやらなければ先に進まない。
 ミスキン警部は、貴族であるマシンガム警部とは正反対、貧しく育った叩き上げ。私生児として生まれ、母の母である祖母に育てられたのですが、住んでいたのは、もしかしたら本物の貧民窟の方がましかもしれないというぐらい、政治家の気紛れで作られた、治安も風紀も最悪な集合住宅。そこから出て独立したい一心で、若くして警察に入り、丁度10年目だと言いますからまだ20代(彼女もそのまま齢を取りません(笑))。
 かといって、ぎらぎらしているわけでもなく、賢く冷静、「褐色の前髪」「端正な顔」、知性があり、すぐにダルグリッシュの捜査方法になじみます。
 私は推理小説の女性ハードボイルド探偵が、嫌いではないですが得意ではありません。どうして、フィクションには、働く女性というのは男性とやたら張り合うか、媚びるタイプしかいないんでしょうねえ。そこへいくと、このミスキン嬢は、表向きは男性と張り合うことなく、かといって裏での立ち回りが上手いというタイプでもない。裏表なく真面目に働き、それで認められなくても熱くならず、また働く。彼女もまたダルグリッシュ同様、ジェイムズ女史独特の、「ただそこにいて、必要な仕事をしているキャラクター」です(ファラミア大公殿下といい、私、こういうキャラ好きよね…)。仕事というのは、いるべき時にいるべき場所にいて、すべきことをする。結局それに尽きる、ということを、同じように高卒で公務員の世界に入り、それなりの地位に昇ったジェイムズ女史らしく、あるがままに描いているのです。見習いたいです。長くもない社会人生活でしたが、立派に失格だったので(^^;)
 ”自然体”を謳うとそれ自体もう自然体ではないと思うのですが、ジェイムズ女史の作風、ミスキン警部というキャラクターは、押し付けることなく、なすべきことをなしているから、本当の意味でカッコイイ。素敵です。だから大好きなんです。
 (彼女ほど淡々としてはいないですが、近いと言えばイアン・ランキンのジョン・リーバスシリーズの部下、シボーン・クラークも、非常に優れた女性刑事です。ミスキン警部から見るとダルグリッシュは範疇外のようですが、クラーク刑事とリーバスはさて、どうなるのでしょう…?)

 さて、今回の被害者は…嫌われ者ではなく(笑)、まあいい人か悪い人かはわかりませんが、大臣を辞任したばかりの准男爵。しかも何故か、教会の聖具室で、浮浪者と一緒に喉を切り裂かれて…
 この謎だらけの事件に、ダルグリッシュ警視長登場です。ダルグリッシュは偶々被害者と面識もありました。また、以後も「デリケートな事件」となると、ロンドン警視庁きっての紳士ダルグリッシュにお呼びがかかります。それ故に、彼を「お上品」「鼻持ちならない」と揶揄する向きもありますが、彼の実力は誰もが認めており、本当に嫌われているわけではありません。やはり人徳というものでしょうか。しかしそういうところが、好きでない人には「可愛くない」ということにもなるのでしょう。やはりいい齢食った人間の、安住の地でしょうか、ジェイムズ女史は(笑)
 被害者が名門出身なだけに、大きなお屋敷には母親、妻、その兄、使用人、運転手などなどがおり、前妻との間の娘は父に反発して別居中。で、またこの人間関係がいかにも爛れてるんですよね。妻の従兄弟の医者だってあやしい。
 
 今回も、犯人の登場のさせ方、描き方、クローズアップの段階の取り方、本当に見事なのですが、さて、犯人が「意外な人物」か「予想されうる人物」かを書いてしまえないのが辛い所。犯人を誰にするか、ではなくて、決められた犯人をどんなに風に描いているかが、読み終わってみるとあー凄かったなと思う作家なのです。

 話をミスキン警部に戻すと、この『死の味』は、彼女の話と言ってもいいのではないでしょうか。
 全く、あのラストシーンを忘れていたなんて!いかに推理小説とは、読み終わった次の瞬間に犯人を忘れられるかが勝負とはいえ、この作品は…
 リアリティ、というと本当に安っぽい言葉になってしまっていて残念ですが、この作品もまた、結婚、出産といった、まあ一応普通とされる女性のステップを一通りやってからあらためて読むと、リアルですね〜。
 ミスキンは、育ての親である祖母には、感謝しつつも、その世話をしなくてはいけないことをどうしてもうとましく思ってしまう。それは、感謝とはまた別の問題。彼女が自分の努力で頑張れば頑張るほど、どうしても、いつ休職に追い込まれるかもしれない、目の放せない祖母は邪魔になってしまいます。でもやっぱり、育ててくれた人。
 彼女が漸く手に入れた自分の城、テムズ川を見下ろすアパート。1人暮らしをしたいと思う人は(私は思ったことがありませんが)、一番の理由は、家の中を自分の思う通りにしたいということだと思います。ミスキン警部も、自分の城の中を自分の好みのインテリアで揃え、一日の終わりにテラスでグラスを傾けることを無上の喜びとしています。でも、毎週実家に行って、祖母のために買出しをしたり、普段も電話で、環境最悪の家に住む祖母の愚痴を聞いてやらねばなりません。
 一方、マシンガム警部もまた、衰えが急に目立つようになった父の老醜がうとましい。家を出ている兄の代わりに、自宅でのそんな父との付き合いを引き受けねばならない。
 と、それぞれのうとましさが描かれますが、ミスキン警部とマシンガム警部は、当然、出身と経歴の違いから、すぐに上手くいくわけでもなく、そして感情の面でまで上手くいかなくてはいけないわけでもなく、嫌い合っているわけでもなければ仲良しでもなく、ただ一緒に仕事をこなします。このあたり、すぐに「何か」起きてしまう凡百の小説とは違います。
 ただ、プライヴェートについてはお互い話したがらない故に、ミスキンはマシンガムを、貴族の父を持ち気楽なものだろうと思っているし、マシンガムもまた、ミスキンは独立を果たしてさぞや気分がいいだろうと思っている。仕事の上ではむしろいいコンビになれそうな2人なので、わかりあえるかと思いきややっぱり、少しの誤解も含めてどこかしこりというか、わかりあえない部分は抱えている―――ということも描かれているのです。このへん、表面では何らお互い問題なく見えても、自分の抱えている問題に関してだけは、互いを比べ、相手の方が楽だと思ったり、思いたかったりする…という、非常にリアルな場面です。
 そして、このミスキンというキャラクターの登場と人間性が、大詰めのドラマに絡んでくる。
 プライヴェートの部分を公の仕事の結末に絡ませるのは、ジェイムズ女史とはいえ些か無理があると言えないこともないですが、それでも、彼女と祖母の会話は胸を打ちます。ジェイムズ女史、冷静なだけじゃないじゃないか、こんな熱いドラマを書けるじゃないか!と読んでいて嬉しくなりました。
 この作品が、何と『黒い塔』に続き、またもEWA賞を受賞したのは、あくまでも謎解き小説としての腕だとは思いますが、私にはやはり、このラストのドラマが一番印象に残ります。
 
 派手な殺害現場、”ダルグリッシュ向き”の事件、ドロドロ一家、2人の魅力的な部下。要素がどんどん出揃って、愈々ジェイムズ女史、ノッてきました。
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2009年09月11日

P.D.ジェイムズ再読E―『わが職業は死』

 
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star繊細で悲しい動機の殺人事件に挑む
star汚く、どこか美しい人間模様

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 ダルグリッシュ警視第7作。
 この作品から、警視は「警視長(コマンダー)」に昇進しています。このへん日本語には対応する言葉がないようなんですが、前より偉くなり、警察官としては最高の肩書きに近いのですが、まだ現場で働くことができるんだそうです(巻末解説より)。
 そしていつの間にか彼もまた”サザエさん世界”の住人となり…初登場から30年経っても、まだいい感じの中年です(笑)。
 書き始めた頃は自分よりちょっと上だった男性が、今は息子ぐらいの齢になっちゃってる…ジェイムズ女史も、最新作を見ても、彼への愛情はかなり深く、「お土産」としての彼の幸福を計画している節があります。
 まあしかしそんな先のことはともかくとして。
 今回もまた…閉鎖的人間関係。
 病院でこそないものの…
 法科学研究所ちゅう、またいかにもな世界。
 冒頭からして暗く…
 そしてまた、被害者は、誰っからも嫌われてる人間(笑)。
 そんなこと言ったら、したら嫌われるってわかってるのに、全部やる人みたいですね。いたのかもしれませんねえ、こういう人、作者の知っている人で。
 好きだねもう(笑)重いネタが(笑)と。もう半笑いでついていきますよ。いつものことさ(笑)。
 でもって、今回もまた、人間ってのは複雑だなあ、一対一でも複雑なものが、下手に絡んでしまうと大変だな、と。

 ジェイムズ女史というのは、ステレオタイプな枠の中に新しくリアルで強い作風を組み上げることで素晴らしい処女作を書き、以後もその強さは変わりませんし、ステレオタイプな登場人物もほとんど出てきません。
 しかし今作まで読んできて、「あ、いわゆる悪女タイプの女性って、毎度登場してるじゃん?」と思いました。
 処女作の被害者然り、『ナイチンゲール』然り。男を次々手玉に取る…というタイプでなくても、精神的に随分ねじけちゃってるというか…余り身近にいてほしくないタイプ。複雑キャラ。
 そして今作では、文字通りの悪女。モテモテ。
 こういう、今じゃ「普通」になっちゃった「嫌な女」も書くのね、と。ちょっと珍しくは思いました。
 勿論、ジェイムズ作品なので一筋縄じゃあいきませんが、やっぱり悪い女。モラル的に悪い女。
 そしてこういう女が出てくるもので、男女関係の生々しさではこれまでで一番かも。
 愛って何だべなあ…
 謎が解けると共に、「切なさ」が強いのも、結構珍しいかも。幕切れも…

 この作品で、マシンガム警部という、初めてのシリーズキャラクターとなる部下が登場します。
 やっとこの作品あたりから、作者も「ダルグリッシュ世界」を構築していく決心がついたのか…
 このマシンガム警部は貴族の家に生まれて、軍人ではなく警察を選んだという変り種。
 以後、これまたリアルで個性的なシリーズキャラクター同士の丁々発止も、シリーズを盛り上げていきます。
 この作品まで読んでしまったあなた…もうやめられませんね(笑)
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2009年09月10日

P.D.ジェイムズ再読D―『黒い塔』

黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)P.D. James

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star海辺の不気味な世界
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 ダルグリッシュ警視第6作。何故今回順番が飛んだかというと、一応前作であるコーデリア・グレイものの『女には向かない職業』でも重要な役割を果たしているためこれを第5作に数えるのが通例のようなので、これに従ったからです。
 EWA賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
 今回は『不自然な死体』同様、ダルグリッシュの身内がらみの事件。昔世話になった神父から「相談したいことがある」という手紙を受け取ったダルグリッシュは、休暇を利用してドーセットに出かける。そこは海辺の、怖ろしい伝説の残る塔を望む障害者療養施設。ところが、ダルグリッシュが着いてみると神父は既に亡くなっていた。ダルグリッシュからの返信を読むこともなく…
 個人的には、どちらかといえば、こういう、ダルグリッシュのプライヴェートがほんの少しとはいえ垣間見える設定の話が好きです。
 神父の遺言で蔵書を譲られた行きがかり上、遺品整理を始めるダルグリッシュ。神父の相談事とは何だったのか?そして神父の死は本当に病死なのか?そして新たな殺人が…

 今回も、というべきか、閉鎖された、「病院もの」同様、病的な環境の中での殺人。みんなあやしいです(笑)。
 怪文書も出回っていたり…
 過去の事件を引きずる者もいる…
 土地柄も不気味です。
 でも読んでてたまらなくワクワクします(やっぱり相性ってもんだな…)。
 こう…ただでさえ閉鎖空間なのに、肉体的にも普通でない状態を抱えた人間ばかりという状況下で、やはりジェイムズ女史の人間描写がいい。リアル。こういうデリケートな舞台を過不足なく冷静冷徹に描けるのはもう天才ですね。読者も、まるで自分がダルグリッシュの隣で一緒に見ているかのように思える。一緒に見て、一緒に考えて、でも答えは出ない…それは私が鈍いからですが(笑)
 描写は余りにも常識的で、冷徹で、流されることがない、なのに決して嫌にならない。ではダルグリッシュがいかにも人間味溢れる主人公かというとそんなこともない。再三書いているように、ダルグリッシュ自身が、常識人極まりない警察官で紳士です。ごくごく普通で、目立とうということも褒められようということもなく、ただ仕事をしている。こういうの、私の好みではあるんですけどね…イマイチ大メジャーにはなならないという現状を見ると、やっぱりつまらない面の方が多いのでしょうか。エキセントリックならいいってわけじゃないのに。
 話を戻して。今回も実に地道に、少しずつ、関係者の中でダルグリッシュは事実を整理し、やがてはたった一つの真実に辿り着く。
 しかし…!
 作者、二連続「やられ萌え」!?…いやいや。そんなことはないでしょうね。さてダルグリッシュにどんな胸突き八丁が待ち受けているのか。

 …そういえば、そもそも、今回ダルグリッシュは病み上がりなんでした。
 しかも、白血病…と誤診された肺炎で(爆)
 どうやったら肺炎が白血病になるんやねんと思いますが…所謂、医者が患者じゃなくて検体と数値だけ見てたってやつですかね。
 ともあれ、ダルグリッシュは入院中にコーデリアからお花をもらっており、そのことや、『女には向かない職業』でのやりとり(余り平和的ではない)で、コーデリアはダルグリッシュに気があるやに推測する向きもありますが、私はそれはないと思いますね…。齢も違うし、生きている世界もちょっとずれている気がする。あくまでも、同じ作者で共通した世界にはいるというだけでしょう。或いは作者にも、折角自分が生み出した男女1組として、いずれはどうにかするつもりはあったのか…今となってはわかりません。
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2009年09月09日

P.D.ジェイムズ再読C―『ナイチンゲールの屍衣』

ナイチンゲールの屍衣 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ナイチンゲールの屍衣 (ハヤカワ・ミステリ文庫)隈田 たけ子

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 ダルグリッシュ警視第4作。
 6年ぐらい前の、第一次ブームの時、この作品と『黒い塔』を購入していました。
 これもまた、作者お得意の「病院もの」。今回はもっと病院らしい病院というか…陰鬱な、郊外にある、古い屋敷のような病院兼看護学校。
 他の作品も多くがそうなのですが、今回の被害者も「誰からも嫌われている人」。
 こういうの…実は…だーい好き(笑)
 誰からも好かれている人が殺されるよりはいいじゃないですか。
 そして遺憾なく発揮される、女史の厳しい筆!
 処女作『女の顔を覆え』同様、被害者は、人の秘密を握っては弄び、もんのすごく嫌われていた学生。彼女が、何と衆人環視の中で殺される。胃に直接栄養を流し込む技術の実習中、温めたミルクのはずが、毒物を流し込まれて…
 その上すぐに、第二の殺人が。
 殺人が起これば、あらゆる人間関係が曝け出される。
 病院内の秘められた人間関係といったら…まあ…ry
 まあそれは、日頃苦労していらっしゃる医療従事者の方に申し訳ないのでこのへんにして。とはいえ流石そのへんの勤務の長かった女史のこと、今回もリアルです(笑)。
 そしてまあ今回も、暗いです、重いです(笑)
 冒頭も、舞台となる看護学校に今日これから視察に行くという視察官の女性の、目覚めてから現地に着くまでのうだうだ。もう嫌んなっちゃう人はここでいきなり放置っていう(笑)。
 しかしついていきますよ!へこたれませんよ!だって私、そういうちまちました場面こそ、好きなんだもの(笑)(やっぱり多少はオタク気質の人に向くのかな…)
 そしてダルグリッシュの推理は、いつもながら一歩一歩、確実に核心へと迫っていく。
 いつもながら、1人1人のキャラクターがしっかり描写されていて、やめられない。途中で止められない。止められるもんなら止めてみろ。
 処女作、奇妙な装飾をほどこされた死体、休暇のはずが事件、という3つのパターンの後、今回はまた別のパターン。まあ割と推理小説にはよくあるものですが…

 そして、この作品の一番の特徴は、「ダルグリッシュは知性派探偵なのに、何故か終盤でバイオレンスに巻き込まれる」というパターン?の最初の作品ということでしょうか。
 ネタバレぎりぎりですいません。
 しかし、この後の『黒い塔』といい…
 もしかして女史、愛するキャラクターには「やられ萌え」!?
 いやそんなことはないっ。女史に限ってそんなっ(でも嬉しかったり)。
 脳内腐敗がこれ以上皆様に伝染しないうちに、幕。
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2009年09月08日

P.D.ジェイムズ再読B―『不自然な死体』

 
不自然な死体 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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 ダルグリッシュ警視第3作。
 この作品で評判を固めた感じです。
 今回は、休暇に来たのに近所で殺人事件が…というパターン。
 もうこれは、ダルグリッシュがいかに普通の警察官であろうと、一度は避けられない宿命のようです(笑)(二度あるけどね(笑)=『策謀と欲望』)
 物書きが何故か集まって暮している集落。そこに、婚約者と母親を相次いで亡くし、家の切り盛りをしているうちに婚期を逸してしまったダルグリッシュの叔母(恐らく父親の妹)がいる。そこでのんびり、のはずが…
 恋愛小説家、推理作家、劇作家、評論家、みんな嫌な奴ですね(笑)。ちなみにダルグリッシュの叔母ジェイン(というとミス・ジェーン・マープルを思い出すけど…)は鳥類のアマチュア研究家。
 この叔母とダルグリッシュは、長い会話は描かれていませんが、叔母もダルグリッシュ同様、真面目で非常に賢い女性だということはよくわかります。ダルグリッシュが一番親しみを感じる女性だというのも無理はありません。(ダルグリッシュは、概ね、知的に自分と対等な女性が好みのようです。当たり前か…)
 さて今回の犯人像ですが…
 やっぱり、ジェイムズの目は冷徹ですね。綺麗ごと、無理な同情はない。多分、公務員としての仕事でこういう人は何度も目にしてきたんだろうなーと思う。私もこの犯人みたいな卑屈な人は嫌い。
 そしてダルグリッシュは、第1作『女の顔を覆え』で出会い、第2作『ある殺意』で偶然再会した(自分が詩集を出している出版社の社員だった!)デボラとは、デートをする間柄ではありますが、そろそろけじめをつけなくてはいけない時期にきています。結婚か、さもなくばきちんと別れた方がいいと。まあお互いいい齢ですしね。
 しかし結婚というのは究極のエゴイズムですね。「縛り、縛られていい」という。
 私は結婚してみてから常々、結婚というのは結局、ある程度は「押し」と「勢い」と「厚顔」だと思っています。「互いに同じぐらい想っている」だけでは実現しない。どちらかがもう片方より少しだけでもいいから押しが強くて、厚顔でなくてはいけない。何故なら、多少は窮屈な思いをしても「夫婦」になりたい、と思ったら、「縛りたくない」なんて綺麗ごとは乗り越えなくてはいけないから(同時に、「縛られたくない」という、これまた別のエゴも)。
 で、ダルグリッシュはどうかっていうと…(笑)
 「縛りたくない」で悩んでますね、毎回(笑)。
 後の作品を見ると、デボラ以後にもデートをしたりあらーんな関係にまで至った女性には不自由していないようです。勿論そういう描写があるわけではなく、彼の恋愛パターンはいつも結局「お互い束縛したくない」でフェイド・アウトだ、というくだりが、最新作『灯台』にあるのです。
 まあ彼の場合、「縛られたくない」よりは「縛りたくない」の方が強いだけまだいい人というべきか…
 結局は、カッコつけェなんですね(笑)。(これもカッコいい主人公の宿命か!?(笑))
 普通に20代で結婚、ところが出産で妻子諸共亡くしたという壮絶な過去もありますが、それももう(この話の時点では)20年近く前のことですし、トラウマになっているという描写もありません。他の女性を好きになれないほど奥さんを愛していたわけでもない…このへんジェイムズらしく淡々としてます。実際デボラとは確かに恋に落ちているわけですし、好みの女性がいれば好きにもなります。
 結局、「縛りたくない」なんて思ってるうちは、その人のことを本当には愛していないんでしょうね。「自分の家にいる彼女を想像できない」「(2人で出かけた色々な場所が)背景にないとダメだ」なんて…アンタがダメだよ(笑)。本当に好きなら、四の五の言わんと家に入れてしまいますな。まあそれで失敗する人は失敗するってこともありますが…
 そんなこんな、プライヴェートではさっぱり煮え切らないカッコつけマン(死語)なダルグリッシュですが、後にまた私を悲しませることに…(笑)
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2009年09月06日

P.D.ジェイムズ再読A―『ある殺意』

 
ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ文庫)P.D. James

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 最近の数作以外は文庫すら古書でしか手に入らない、「隠れた女帝」P.D.ジェイムズ。
 有名なのは、私イチオシのダルグリッシュ警視(長)ではなく、女性探偵の草分け、コーデリア・グレイもの。
 『女には向かない職業』(コーデリア・グレイもの)までですが、詳しくレビューして下さっているページ。
 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Christie/4642/kansou/james.html#cover
 まあ、一番わかりやすい紹介は、映画「トゥモロー・ワールド」の原作者ってことかな。現在、原作『人類の子供たち』も『トゥモロー・ワールド』に改題されてしまったようで、これは残念です。元のタイトルがいつもながらこの作者らしく意味があるのに…。ちなみに映画は原作とは比べ物に(ry

 さて、今回は、昨日届いた第2作。
 この頃はまだ長くないですね(笑)。作者お得意の病院もの。
 …前回あんだけブッた割には、この作品にはまだそんなに思い入れはなかったりする(^^;)
 でも、推理小説が、探偵のエキセントリックさだとかトリックだとか犯人の意外性だとか、そういうお約束だけでできるものではなく、むしろそういうのがなくたって物語として面白いことを証明しているような―――ぶっちゃけ、当たり前の推理小説が好きな人なら、勝手に「物足りない」と思うか、それとも、「推理小説ではない」と思うか…
 しかしやっぱり、最後まで読めば推理小説なんである。だって理屈で犯人もわかるし、謎も解けるんだもの。 
 
 それにやっぱり、上手く書けてる。人間が。生活が。
 恋愛、離婚、オールドミス、浮気、…人間のあらゆる面を、まあよくわかっていらっしゃることです…
 女性の、特にこの作品では、とりわけ経済的には余り恵まれていない、ごくごく普通の若い女性の生活がこまごまと、実によく書けている。
 ジェイムズ女史は、家計を1人で支え、男顔負けに公務員の世界で出世した人ですが、実に女性らしい、普通の女性だと思います。
 生活をどうするかとか、家の中の本当に細かいこととか、女性ならではの小さな悩み小さな喜びとか…リアルですね。
 こういうものを、働いて、子供が2人いる中で書いていたんだ…と思うと、ただただ溜息が出るばかり。
 後の作品に登場する女性刑事の介護の問題もそうなのですが、人間としての生き方と、女性としての大変さと、娘として妻として母親としての義務と…
 でも重苦しくなく、やっぱり実に賢く生きていた人なんだなあと思う、非常に理知的かつ冷静な文章。だから読んでいても、リアルだけど辛くない。
 こういう言い方は控えたいけど、やっぱり言っちゃう。この人の作品は、若い子にはわからん(笑)。少なくとも、社会人で、1度や2度の恋愛は最低限必要。できれば、結婚中または結婚歴あり、子供もいるなら一層いい。
 個人的には、結婚して、子供もできてからまた読み返して、本当によかったと思っている。面白さが、未婚の頃に比べて数倍している。
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2009年09月05日

P.D.ジェイムズ再読@―『女の顔を覆え』

 山室まりや訳、ハヤカワ・ポケットミステリ及びハヤカワ・ミステリ文庫。現在は中古でのみ入手可能。
 
女の顔を覆え (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 129-6))
女の顔を覆え (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 129-6))山室 まりや

早川書房 1993-05
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 P.D.ジェイムズ読み直し。最初に読み直したのは『ナイチンゲールの屍衣』、『黒い塔』なのだが、記事は作品の発表順に。
 読み直しても、やっぱりこの作品は初読と同じインパクト。
 犯人は…。
 …うーん。どう驚いたのかを詳しく言うとネタバレになってしまうのが辛いところだ。
 意外な犯人。しかしその「意外さ」の出し方にひとひねりある、と言っておこう。
 処女作らしく手探りであったろうに、出来上がりは実にかっちりとした、処女作らしからぬ安定感がある。
 文庫版解説にもあるように、枠組みは旧来のイギリスの推理小説らしく、しかし中身は可能な限りリアルである。田舎の名家の邸宅で、犯人は限られている。しかも、皆に嫌われてる女性が被害者、というあたり、クリスティーっぽい…のだが、ジェイムズ女史ご本人は彼女と比べられるのは不本意だそうなのでやめておく。
 この記事によると(この記事のソースは何だったか、失念)で読んだのだが、この処女作は3年がかりで書き上げたという。これは、3年間練りに練った、ということではなく、単純に子育てと夫の介護で超多忙だったからだろう。それに、出勤前の3時間ぐらいで書き続けたという。…見習いたいもんですよ、勿論。難しいけど。
 ただ、確かに、子供がいても何かまとまったことをしようとしたら、子供が寝てからの夜更かしよりも、早く寝て子供よりはるかに早く起きた方がその日1日のペースがつかめて時間が無駄にならないとは思う。夜更かしして、子供と一緒、もしくはうっかり子供に起こされるようなことになると、1日中ボーッとして非常に辛い(笑)。
 まあそんなことはともかく。
 時間のない中でも、「一番自分を楽しませてくれた分野の作品を自分も書きたい」という夢を諦めなかった女史、大好きだ。

 今回の再読で気づいたのだが、女史の作品の被害者は、嫌われ者とか、才能はあっても周囲と折り合いの悪い人が多い(『死の味』やいくつかの作品は普通の人が被害者だが、最新作『灯台』ではまた、嫌われ者の作家が殺されてるし)。読む側にもちょっと有難い(笑)。単純に、女史にとっては、「誰からも好かれる人なんていない」という、シニカルな事実をいつも優先しただけなのかもしれないが。それと、「どんなに悪い人でも殺しちゃいけない」なんて正義感をふりかざしていないところもいい。探偵役って、こういう単純な正義感に陥ることがしばしばあるので。(推理小説の元祖、ホームズも、必ずしも正義感だけで行動はしていない結末も結構あるから、やはり流石である。)
 ダルグリッシュにとっては、勿論彼が普通の感情―仕事とはいえ、秘密を穿り返すことに対する罪悪感、嫌悪感―を滲ませるシーンも非常に魅力的なのだが、あくまで仕事であって、男らしく社会人らしく、淡々と犯人を捜すことが第一義なのだ。この、処女作から一度たりともぶれたことのない常識的社会人(いやむしろそれこそ理想なのか…)ぶりがたまらない。女史自身、主人公をアマチュア(探偵)かプロ(刑事)にするかは迷ったそうだが、「もし」があるなら女史が探偵を描いても上手かったろう(女史は私立探偵コーデリア・グレイものも書いてはいるが、彼女はプロに対するアマチュア=私立探偵の系譜でというより、初の本格的女性探偵シリーズという意味で語られるべきだろう)。しかしまずは、推理小説界には珍しい常識人探偵を生み出してくれて、私はこのダルグリッシュが探偵役の中で一番好きだ。
 
 この処女作から、視点がコロコロ変わる文体が採用されている。池波正太郎のそれがよく映画のカット割りのようだと言われるが、女史の表現力も確かなので、全くわかりにくくない。
 被害者についても、すぐ殺されてしまうので他人の視点からしか語られない。彼女が何を考えていたのか、まあ他人の視点でも概ねわかるのだけれども本当に本当のところはわからない。
 ただ、『ナイチンゲールの屍衣』での被害者女性同様、所謂「握った秘密をもてあそんで他人の反応を楽しむタイプ」というやつで、…要は、嫌われるヤツだよね(笑)。個人的には、この『女〜』の被害者は、同情に値するとは思わない。どんな理由があれ、自業自得という面があるのは読者の誰もが認めざるをえないだろう。
 そして、肝心の主人公、ダルグリッシュ主任刑事(当時)。
 描写が少ない。もう可能な限り少ないという感じ。スーパーな人にはしたくなかったんだろう。容姿についても最低限の描写と、詩人であることと、初産で妻子諸共亡くしたことだけが描かれている。
 なのに、いっちょまえに登場人物に恋をするという、いきなりロマンチックヒーロー!な側面がある。
 女史、勇気あるなあ…
 処女作。この次かあるかなんてわからない。
 逆に、わからないからこそそういうストーリーも入れちゃえ!だったのか。この処女作がウケなくて次がなくてもいいように。
 それとも、絶対に第2作も発表できる!という自信だったのか…
 確かに、どっちでもいけるように、上手い幕切れにはしてるし。
 今、この処女作を読み直すと、この、初めから恋愛要素ありという設定には色々考えてしまう。
 いずれにせよ、ダルグリッシュは処女作からずっと変わらず、どちらかと言えばストイックなタイプで、なのに彼が本当に恋をしたらどんな風になるの?と、女性としてはついつい思ってしまうオイシイキャラクター。
 そして…うううっ(号泣)
 いや…愛してる!何があっても!

 あと、個人的には、もう1人のシリーズキャラ(こっちの方が有名…)、コーデリア・グレイはあくまでダルグリッシュには恋愛感情ではないと思う…。「気があるらしい」と書いている解説もあるけどね。
 コーデリアにとってダルグリッシュは確かに憧れの人だけど、年齢も倍近く違うし、ダルグリッシュから見ても彼女の年齢だとどうも射程外らしいし(笑)。でも、ダルグリッシュも、むしろコーデリアのように、まだどうとでもなる若い女性もターゲットにしていれば、後の、相手はみんなそれなりの齢で立派に自立した女性で、「束縛したくない」というジレンマからいつも長続きしない…という状況にはならなかったんじゃないかと。しかしこれは彼の趣味の問題だから仕方ない(笑)。
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2009年09月04日

P.D.ジェイムズ再読・序

 私が、一番好きな推理作家―漸くそう言い切ることにする―、そしてシリーズキャラクターである。
 日本では、実力に見合わぬ、「微妙マイナー大巨匠」。
 しかしここで、小さな場だが声を大にして叫びたい。
 最高だ!
 一般的には、
 ”長い”、”余りに文学っぽくてとっつきにくい”、”重い”…
 ”主人公が普通で面白くなーい”。
 それが何だ!何だってんだコラ!
 言ってみれば…
 斬る相手を選ぶ名剣。
 斬られて嬉し、天国。
 …確かに、今気づいた、ややMっぽい方がこの、重くてリアルで真面目な警官が主人公の、とことんイギリスなシリーズには向くかもしれないな…(笑)
 興味を持った方、ドカーンと斬られちゃってみて!

 「P.D.ジェイムズ」がどんなおばあちゃんか見たい方は、先にこちら、ランダムハウス社内公式サイトをどうぞ。
 http://www.randomhouse.com/features/pdjames/

 再読、と言っても私にとってであって、ブログで本書を採り上げるのは初めて。
 初めてジェイムズ作品を読んだのはブログを始めるずっと前のことで、ブログで初めて扱ったのは『神学校の死』であったと思う。だから、「再読だけどここでは初めて」は、『正義』まで同様。
 ジェイムズ作品同様、「読んだのが余りに前であるが故にこのブログでは忘れ去られていたもの」はかなり沢山あるのだが、その中ではジェイムズ作品は是が非でも表に出してこないといけないと思ったし、偶然最近、最新作(日本での)『灯台』を読んで(85歳にしてこの体力!)、結局全作品買い集めることにしてしまったのもいい機会なので、感想書きを始めることにした。
 私の読書はほとんど図書館頼み(読む本を全部買っていたらとっくに寝る場所がないはず)なので、書名などと一緒に借りた図書館名も記録しているのだが、その記録を見直すと、ジェイムズ作品の初読の時は結婚する前に通っていた図書館で借りていた。ということは、少なくとも6年以上前ということになる。初めてリアルタイムで読んだ作品が『神学校の死』で、これもまだ結婚前。次の『殺人展示室』でやっと、結婚2年目である。
 当然、初読当時の私は結婚もしていなければましてや子供もいなかったし、その頃に比べれば、いくら齢が齢とはいえまだ何らかの成長はしているはずなので、やっぱり6年以上も経ち、結婚して子供も持つと読み方も随分深くなったと…思いたい。実際、初めて読んだ時は全然気づかなかったことにいくつも気づいてますますこのシリーズにハマっているのである。
 シリーズ、と書いたが、ここで採り上げるのはジェイムズ作品の8割を占める「ダルグリッシュ警視(長)シリーズ」である。コーデリア・グレイものの方が日本でははるかに有名だし古書店でもよく見かけるが、採り上げない。ノン・シリーズも非常に素晴らしいが同様である。
 とにかく怖ろしいことに、このシリーズは、読み始めると全てを犠牲にしてでも一気読みしたくなる(笑)。
 正直言って主婦の敵、子育ての天敵である。そういえば初めて読んだ時も、一気読みだった。詳しくは述べないが、一日中座っていればいい仕事で、1日7時間本を読み続ける生活を6年続けて、そういう状態だったので、幸福にも一気読みができたと思う。勿論、通勤時間にかかれば電車の中でも読んだ。
 余りに描写が詳細かつそれが嫌でなく、最高に「本を読んでいる」以外の何物でもない状態に誘い込んでくれる。故に、絶対に「一旦ストップ」ができないのである。
 何という満足感…
 読書が趣味でよかったと、これほど思わされるシリーズはない…
 …(遠い目)(余韻)
 (幸せなため息)
 (にやにやが止まらない…)
 まあそういうわけである(笑)。
 一言で言えば、現実逃避にこれほど最適なものはない…のだが、あくまでも、こういう作品が好き、ならである。
 文庫版『ナイチンゲールの屍衣』の解説で権田萬治さんが、瀬戸川猛資さんの指摘として、P.D.ジェイムズ作品は、
 ・通勤・通学の乗り物の中だけで読む
 ・寝る前に少しずつ読む
は禁止、と紹介なさっているのは正にその通りで、もう、読み出したら絶対に止められない。(ということはつまり、寝る前に読み始めたら間違いなく睡眠時間は半分以下になるわけだ)
 今回最初に読み直した『ナイチンゲール』は諸事情あって2日に亘ったものの、実質的に9割を読んだ2日目は一気にラストまで。
 『黒い塔』に至っては、この本を一気読みしたいがために、子供を禁断の昼寝に追いやり(そう、夜が大変なのは重々わかっているのだが…)、しかも、トースト・ベーコンエッグ・紅茶という英国式朝食を昼食に用意して読み始めた。(そこまでしたのに…淹れた紅茶は余りに古くなっていて味も何もなかったというオチもついたが。)
 一言で言えば…「本を読むことが好きな人」かつ「主に推理小説を読む人」には一番の作家ということである。
 推理小説ファンなのにまだ食わず嫌いしている人には「勿体ない!」と言いたいが、まあ…これも趣味だから無理強いはできない。ライトな推理小説がいいという人には勿論、ミステリに文学性なんて要らねえよとまで思っている方には、逆に、没入させてくれるという特色ゆえに、お勧めはしない。
 また、ジェイムズ作品について書く時には必ず書いていることだが、主人公があくまでも常識的大人、由緒正しい英国紳士である点も、好き嫌いが分かれるのだろうか。私はむしろ、そうだからこそ大好きなのだが!
 そして、常に英国らしい生活が流れていること。結局どんな事件の物語であろうが、あくまでもそれは「英国的生活」(と、当然そこから生まれるイギリス人的常識)の中で起こっている出来事にすぎないのだと、そういう背景も含めてもう完全にストーリーに没入できる。で、私はその英国的生活ってのが大好きなのである。その理由はもう詳しくは書かないが、ロンドンには2回行ってフリープランで歩き回って、老後また真っ先に行きたいのも間違いなくロンドン(笑)。何というか…もう、動じないっていうかね。事件が起きても、一般的には無粋と思われている(ダルグリッシュ警視はそうではないのだが…そこがまた、奇人な探偵の好きな人には可愛げがないということになるのだろうか?)、警察官という人種が自分たちの中に入ってきても、やっぱりベッドで飲む紅茶に始まって紅茶で終わる生活、イギリス人的な合理的だったりマナーを優先する(時々は鼻持ちならない、と他の民族に思われる)ものの考え方は絶対に変わらなかったり。
 イギリスの街。イギリスの田舎。イギリスの建物。イギリスの自然。イギリス人の社会。こういうもの全てがリアルかつ、リアルというとすぐクソリアリズムと最近では思われがちだが、違うのだ。ただひたすらに、物語にはまりこむ助けにしかならない。
 ここで遅ればせながら著者のことを簡単に述べておくと、1920年オックスフォード生まれ(うちのばあちゃんと同い年!)、高校卒業後、医師と結婚し娘を2人もうけるが、夫は戦争で精神を病み、療養中も、そして夫の死後も、著者が公務員として生計を立てる。保険、警察、少年犯罪といった、結果的には推理小説に非常に役に立つ分野で勤め上げ、その功績で、DBE及び一代貴族「ホランド・パークのジェイムズ女男爵」に叙されている。(Wikiよりもはてなキーワードの方が詳しいので、こちら
 正に、彼女の作品の特徴は、中産階級出身で、当時の例に漏れず女故に大学教育は受けさせてもらえず(確かそんなことをどこかで読んだ。彼女が最も影響を受けたD.L.セイヤーズは女性としては当時女性として初めてオックスフォード大学で学位を受けた1人なのだが)、若くして結婚、運悪く夫に生活力がなく、社会に出て、女ながらに男社会で上りつめたスーパー社会人で、故に常識的、現実主義であり、同時に豊かな発想力があり怖ろしく体力気力があって頭のいい、要は凄くカッコイイ女(現在89歳)故のもの。
 その経歴故に、病院、研究所、学校といった「閉鎖的組織内での歪んだ人間関係」ものを得意とするが(実際病院内の男女関係なんてものはねえ…(--;))、とにかく知識と経験の裏づけが凄い。「推理小説だからいいじゃん♪」なんていう、「文学と認めてもらえないジャンル」故の甘え(なんてものは、勿論ほとんどの作家にはないけど、一応逃げ道として存在することは事実である)は微塵もない。
 そして、人間観察の鋭さ、怜悧さ!
 犯人には勿論、被害者となった人物にも等分に厳しい、これまたリアルすぎるほどリアルな人物描写。
 或いは田舎の集落で起きた事件でも、孤島の事件でも…全てが生きている。そこにある。
 著者自身は自分の作品を文学作品と主張してはいないだろうし、やはり推理小説は推理小説なのである。あくまでも、事件が起き、謎が解けるのを楽しみに読むもの。そして余りに巧緻な出来故に、真相は言われてみれば余りに納得で唖然としてしまう。そのくせ、やっぱり驚かされるのだ。犯人が誰と言うよりも、余りにも描きこんで、描き出してくれて、物語を追う事自体が楽しくてすっかりいい気分にさせられて、犯人もちゃんとわかるという、著者の「手口」に!
 アクロバティック?くそくらえ!超人探偵?それが何?
 もう読者は何も持たなくていい、身一つで全てを委ねていい、そんな、豪壮精緻なイギリスの古い建築物にも似た揺るがなさ。
 但し。
 後の作品ほど長い。最新作『灯台』はそうでもないのだが、結果的には「中期の」となるであろう大作はもう、長い、その上、複数のプロットが同時進行する。ので、『わが職業は死』あたりから、かなり体力を要する。流石にそれだけのものは書く方も大変らしく、2〜3年、長い時には9年空いた(ダルグリッシュものとして。この間、グレイものを1作書いているが)こともある、「寡作作家」である。しかしひとたび出れば…凄い。
 当然、CWA賞(英国推理作家協会賞)シルヴァー・ダガー賞3回、及び功績を称えてダイヤモンド・ダガー賞受賞。MWA(アメリカ推理作家協会賞)巨匠賞第1回受賞。
 …という経歴なら、もっと日本でも有名なはずなんだが…
 まあ、数年前にMWA長編賞を桐野夏生と争って受賞したイアン・ランキンもまだまだ、推理小説ファン以外にはそんなにメジャーとも言えないし(そもそも、桐野夏生が候補になったことはニュースになったが、実際に誰が獲ったかは全くニュースにならなかった)。このイアン・ランキンも大好きで以前記事にしたこともあるが、最近カッコイイ表紙の文庫も出まして、これからはどんどんメジャーになっていくことを期待する。
 と、そんな状態なので、はっきり言って昔の作品は手に入れにくい。2000年代の『神学校の死』『殺人展示室』『灯台』ならまだ新本(ポケミス)として手に入るが、それ以前となると、文庫ですら絶版というとんでもない状態で、ましてやポケミス版となるともう骨董品の域に入りそうである。
 しかし…ポケミスの魅力、って、ある。
 おわかりの方にはおわかり頂けるだろうが、あの、ポケミス独特の、「推理小説読んでる感」(その厚さ、オブストラクトな表紙画、ビニールのカバー、小口が黄色く染めてある…が醸し出す)…!!!
 この、ポケミスフェチさは小学生の時クリスティーの『蒼ざめた馬』をポケミスで読んでいっぱしの大人のつもりでいた頃以来変わっていない。
 なので今回は、古書で、なるべくポケミスで集めた。…かなりボロいし汚いが(笑)。
 近所のブックオフなんてものは、店員がポケミスというジャンルすら知らなかった。なので通販である。本当は神保町に行って、ポケミスを沢山置いている書店を探したかったのだがいかんせん時間がない自由がない。
 そうそう、自由がない時間がない故に、こうして大風呂敷は広げているが、1作1作についての感想はメモ程度になってしまうと思う。ご了承あれ。
 というわけで、「途中でやめずに済む時間のある方」で「推理小説がお好き」で、「丹念な心理描写が嫌じゃない方」は、間違いなくもうどっぷりハマって死ぬほど満足できること請け合いである。

 ダルグリッシュものは英国でドラマ化もされており、日本でもビデオが出ていてその広告で写真だけは観たことがある。まあまあイメージ通りと言えなくもない。しかしソフトも放映も未だ観られず。原作本がこうなんだもん、DVD化なんて厳しいよね…(号泣)

 最新作だが、「そんなに長くない」「いわゆる孤島もの」「プロットは1つだけ」ということで、『灯台』は意外ととっつきにいかが。
 
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 本国ではもう1作が既に出ている。齢が齢だけに、今後は1作1作が「最終作」の恐れあり…!別の意味でもスリリング!
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2009年08月21日

P.D.ジェイムズ 青木久惠訳『灯台』(ハヤカワ・ポケットミステリ)

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 自分にとっては久々――3年ぶりのP.D.ジェイムズ、そしてダルグリッシュ。第14作目(コーデリア・グレイものの『女には向かない職業』を第5作とした場合。ソロ作品なら13作目)。
 「そういえば」と検索して図書館で借りたのですが、原書は2005年、そして邦訳は2007年6月。
 …いや無理だって。その頃出産2ヶ月前よ(笑)。しっかしバタバタしてたんだなあ。その当時はその当時でちゃんと追っかけてるつもりだったのに、やっぱり2007年一杯と2008年春ぐらいまでので、逃してたのが未だにポコポコ出てくる。
 とにかくも、私のダルグリッシュ警視長への愛は、言葉では語り尽くせない(笑)
 このブログでも以前記事にしてます。もう大分前になっちゃいましたが。
 愛してる…vvv
 知性的でお上品で(詩集も出しているプロの詩人でもある)、余計な口をきかない。勿論上司の受けもいい…というか、よくいる一匹狼刑事(も、好きですけどね)のように何かと上司に逆らうよりも、黙って実力で一歩一歩確固たる居場所を築いて動じぬ男。デリケートな事件にいつも引っ張り出される、推理小説の探偵には珍しい超常識人(これはもう、著者自身が素晴らしく常識人なんでしょうなあ)。推理小説といえばヘンな探偵がつきもののように思われますが、どうして普通の大人の主人公じゃいけない!?いいじゃないですか、真面目なナイスミドル万歳!
 確かに、一見つまらない、可愛げのない人に見えますよ。でも、余り好きではありませんが今風の言い方をすれば彼も「ツンデレ」って奴でしょうか。表面では堅物で、事情聴取はオトナの上手さ。無駄のない行動。部下にも表面ではベタベタしないが心配りは完璧(部下だってそれにはバッチリ応える!)。そしてやっぱり、事件解決のためには密かにアツくなる、秘めたる情熱の持ち主。クライマックスでは、抑制のきいた描写からさえそのアツさが迸る。そこが快感!!たまらん!やっぱりオトナの楽しみですね。
 しかも、真面目な恋をして、”恋する男”としての姿も、年齢を超越して魅力的。
 もう、こういう人がモロバッチリ私の好みなんですね。声を大にして叫ぶ熱狂的ファンはP.D.ジェイムズには少ないと言われますが、彼女のファンなら、ダルグリッシュ同様、情熱を内に秘めるタイプなのかしら。私は叫ぶけど!愛してる〜!(笑)
 思えばもう、追いかけて6年以上になりますか。勿論全部読んでます。
 愛してる…から、この人に気になる存在ができた(『神学校の死』)時は、1時間ぐらい立ち直れませんでした(笑)(←こういうのを落ち込んだとは言わない)。
 でもショックでしたよー。例えどうにもならない、架空の人物だってわかってても、何も彼女作ることないじゃーん、作者ー。って思いました。思うでしょ。そりゃ。好きな人になら。
 さてそんな、3年も空いちゃった(年月なんてあっと言う間ね…)ダルグリッシュですが、だから、嬉しく借りてはみたものの…
 「P.D.ジェイムスだもんな…」「今っ回も分厚いんだろうな…」(←実際手に取ってるのに(笑))「今っ回も大変なんだろうな…」
と、読み始められずに1週間以上経ってました。
 しかし、家の中でどうにもこうにも他に何もできない日ができてしまって(それがこのブログの日付、21日)、この本を手に取り、ずーっと読んでました。
 そしたら。
 (ねたばれはしてませんが、詳しめの内容です。まるっきりまるっきりゼロで読みたい方はご遠慮下さい)続きを読む
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2009年07月31日

5周年

 気がつくと、本日でこのブログは5周年となっておりました。
 いちげんさんでも、いらして下さった皆様、全員、有難うございます。
 本の話ばっかりのブログにしようと思い、はてなダイアリーの方に(だって操作性いいから…)書いちゃった記事を少しずつこっちに移動してます。でも今まだ2006年の分です(笑)。2006年って、すんごい前ですよね〜。時間が流れるの早すぎ。
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