2009年09月06日

P.D.ジェイムズ再読A―『ある殺意』

 
ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ文庫)P.D. James

早川書房 1998-08
売り上げランキング : 229653


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 最近の数作以外は文庫すら古書でしか手に入らない、「隠れた女帝」P.D.ジェイムズ。
 有名なのは、私イチオシのダルグリッシュ警視(長)ではなく、女性探偵の草分け、コーデリア・グレイもの。
 『女には向かない職業』(コーデリア・グレイもの)までですが、詳しくレビューして下さっているページ。
 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Christie/4642/kansou/james.html#cover
 まあ、一番わかりやすい紹介は、映画「トゥモロー・ワールド」の原作者ってことかな。現在、原作『人類の子供たち』も『トゥモロー・ワールド』に改題されてしまったようで、これは残念です。元のタイトルがいつもながらこの作者らしく意味があるのに…。ちなみに映画は原作とは比べ物に(ry

 さて、今回は、昨日届いた第2作。
 この頃はまだ長くないですね(笑)。作者お得意の病院もの。
 …前回あんだけブッた割には、この作品にはまだそんなに思い入れはなかったりする(^^;)
 でも、推理小説が、探偵のエキセントリックさだとかトリックだとか犯人の意外性だとか、そういうお約束だけでできるものではなく、むしろそういうのがなくたって物語として面白いことを証明しているような―――ぶっちゃけ、当たり前の推理小説が好きな人なら、勝手に「物足りない」と思うか、それとも、「推理小説ではない」と思うか…
 しかしやっぱり、最後まで読めば推理小説なんである。だって理屈で犯人もわかるし、謎も解けるんだもの。 
 
 それにやっぱり、上手く書けてる。人間が。生活が。
 恋愛、離婚、オールドミス、浮気、…人間のあらゆる面を、まあよくわかっていらっしゃることです…
 女性の、特にこの作品では、とりわけ経済的には余り恵まれていない、ごくごく普通の若い女性の生活がこまごまと、実によく書けている。
 ジェイムズ女史は、家計を1人で支え、男顔負けに公務員の世界で出世した人ですが、実に女性らしい、普通の女性だと思います。
 生活をどうするかとか、家の中の本当に細かいこととか、女性ならではの小さな悩み小さな喜びとか…リアルですね。
 こういうものを、働いて、子供が2人いる中で書いていたんだ…と思うと、ただただ溜息が出るばかり。
 後の作品に登場する女性刑事の介護の問題もそうなのですが、人間としての生き方と、女性としての大変さと、娘として妻として母親としての義務と…
 でも重苦しくなく、やっぱり実に賢く生きていた人なんだなあと思う、非常に理知的かつ冷静な文章。だから読んでいても、リアルだけど辛くない。
 こういう言い方は控えたいけど、やっぱり言っちゃう。この人の作品は、若い子にはわからん(笑)。少なくとも、社会人で、1度や2度の恋愛は最低限必要。できれば、結婚中または結婚歴あり、子供もいるなら一層いい。
 個人的には、結婚して、子供もできてからまた読み返して、本当によかったと思っている。面白さが、未婚の頃に比べて数倍している。
posted by 高野正宗 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

この記事へのトラックバック