| 黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ文庫) | |
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ダルグリッシュ警視第6作。何故今回順番が飛んだかというと、一応前作であるコーデリア・グレイものの『女には向かない職業』でも重要な役割を果たしているためこれを第5作に数えるのが通例のようなので、これに従ったからです。
EWA賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
今回は『不自然な死体』同様、ダルグリッシュの身内がらみの事件。昔世話になった神父から「相談したいことがある」という手紙を受け取ったダルグリッシュは、休暇を利用してドーセットに出かける。そこは海辺の、怖ろしい伝説の残る塔を望む障害者療養施設。ところが、ダルグリッシュが着いてみると神父は既に亡くなっていた。ダルグリッシュからの返信を読むこともなく…
個人的には、どちらかといえば、こういう、ダルグリッシュのプライヴェートがほんの少しとはいえ垣間見える設定の話が好きです。
神父の遺言で蔵書を譲られた行きがかり上、遺品整理を始めるダルグリッシュ。神父の相談事とは何だったのか?そして神父の死は本当に病死なのか?そして新たな殺人が…
今回も、というべきか、閉鎖された、「病院もの」同様、病的な環境の中での殺人。みんなあやしいです(笑)。
怪文書も出回っていたり…
過去の事件を引きずる者もいる…
土地柄も不気味です。
でも読んでてたまらなくワクワクします(やっぱり相性ってもんだな…)。
こう…ただでさえ閉鎖空間なのに、肉体的にも普通でない状態を抱えた人間ばかりという状況下で、やはりジェイムズ女史の人間描写がいい。リアル。こういうデリケートな舞台を過不足なく冷静冷徹に描けるのはもう天才ですね。読者も、まるで自分がダルグリッシュの隣で一緒に見ているかのように思える。一緒に見て、一緒に考えて、でも答えは出ない…それは私が鈍いからですが(笑)
描写は余りにも常識的で、冷徹で、流されることがない、なのに決して嫌にならない。ではダルグリッシュがいかにも人間味溢れる主人公かというとそんなこともない。再三書いているように、ダルグリッシュ自身が、常識人極まりない警察官で紳士です。ごくごく普通で、目立とうということも褒められようということもなく、ただ仕事をしている。こういうの、私の好みではあるんですけどね…イマイチ大メジャーにはなならないという現状を見ると、やっぱりつまらない面の方が多いのでしょうか。エキセントリックならいいってわけじゃないのに。
話を戻して。今回も実に地道に、少しずつ、関係者の中でダルグリッシュは事実を整理し、やがてはたった一つの真実に辿り着く。
しかし…!
作者、二連続「やられ萌え」!?…いやいや。そんなことはないでしょうね。さてダルグリッシュにどんな胸突き八丁が待ち受けているのか。
…そういえば、そもそも、今回ダルグリッシュは病み上がりなんでした。
しかも、白血病…と誤診された肺炎で(爆)
どうやったら肺炎が白血病になるんやねんと思いますが…所謂、医者が患者じゃなくて検体と数値だけ見てたってやつですかね。
ともあれ、ダルグリッシュは入院中にコーデリアからお花をもらっており、そのことや、『女には向かない職業』でのやりとり(余り平和的ではない)で、コーデリアはダルグリッシュに気があるやに推測する向きもありますが、私はそれはないと思いますね…。齢も違うし、生きている世界もちょっとずれている気がする。あくまでも、同じ作者で共通した世界にはいるというだけでしょう。或いは作者にも、折角自分が生み出した男女1組として、いずれはどうにかするつもりはあったのか…今となってはわかりません。





推理小説?
海辺の不気味な世界







