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私が持ってるのはポケミス版なんですが…
上巻の帯には「P.D.ジェイムズの最新傑作」。
「最新」で「傑作」なんですね。何か欲張りな惹句です。
下巻の帯には「P.D.ジェイムズの集大成」。
まだシリーズ終わらないんですけど集大成です(笑)。
…まあ確かに、この時点での「集大成」ではあります、っていう、エポックメイキングな作品ではあります。
しかーし!
シリーズの主人公・ダル様ファンとしては、正直「ダル様度」が低く、ちょっと食い足りなかったりもします。
いや、物語としては凄いんです。やっぱりジェイムズ女史、そして又も新たなステージに入ったぞジェイムズ女史、なんです。
この、エポックメイキングというか!ただの推理小説じゃないというか!深い!物語を!
100%解説できりゃ、世話はないんですが…
しかーし!
今回のお話は、どちらかというと、捜査する側の物語というよりは、被害者をはじめとする事件の関係者側のもの、に思えます。
描写の量を数値にするなら、警察側3、関係者側7、ぐらい(あくまでイメージですが)。質的にも、私の中では4:6ぐらいで、関係者側のドラマの方が記憶に残る感じ。
個人的には、今までのようにダルグリッシュの視点で、彼の心理描写がじっくりがっつり!な方が好きなんですが。
しかも、警察側では、今回も、ダル様というよりは、相変わらずケイト目立ってます。プライヴェートでの変化がありまして…。
このケイトと、そしてマシンガム(理由は不明ですが転属しちゃったらしいです)の後任としてやってきたダニエル・アーロン警部の比重が大きい。このアーロン警部は、ケイトともマシンガムともまた違う、ユダヤ人でユダヤ教徒、警官という仕事が家族には恥としか思われていないという、これまた複雑な人物。
さて、今回の大きなテーマは、訳者あとがきに書いてあるんで、言えません(笑)。
所謂、推理小説の枠を超えた…とか、ありがちな解説をされちゃうような、大きなテーマなんですが。
普通に読んでたら、謎が解けるシーンまではテーマなんぞわかりません。いや、一応タイトルで気に留める読者もいるかもしれないけど。
普通に読んだので、ほんっとうにえんえんと、関係者のドラマが続いて、正直「進みがのろい」と感じました。キャラ作りと描写の上手さは今回も楽しめるんですが。そもそも、最初の殺人が起こるのも上巻のラスト近く(自殺死体は最初の方に登場するので「死」そのものはさっさと描かれるのですが)。
ちなみに、被害者は今回も、超嫌われ者です(笑)。創業者から出版社を引き継いだ社長なのですが、強引な経営改善策(由緒ある社屋の売却計画やリストラ)は、創業者一族を含む理事会からも一般社員からも恨みを買っている。おまけに恋愛面でもかなり問題アリな男で…
そして、今回は警察側も、ダル様ではなく、ケイトやアーロンの物語が長々と。一方ダル様ときたら、「警視総監の秘密の用事でどこどこへ」なんてぇことが堂々と書いてあって、不在の場面もある。まあそれだけ、ケイトはしっかりした部下だし、「ダルグリッシュシリーズの世界」がすっかり確立されていて、それぞれがそれぞれに自由に動いている部分があって、あくまでも、物語で扱う事件に関わる部分を切り取ったものが個々の作品、というスタイルになってきたということなのでしょう。
勿論、ダル様も、登場場面が以前より少ない感じはしますが、要所要所のかっこよさは健在です。ケイトのよき上司であり、時に厳しく、時に優しい刑事。証人となる少女とのやりとりは見ものでした。また、年齢が20歳近く違うケイトからみても、”対象外”ではないと仄めかされているような描写もあります。
まあしかし、「のろい」感じはしますね、本当に。ほぼ同じ分量の、これも大作『死の味』の方が、もっと警察側の比重が(ダル様、ケイト共に)大きかったし、もっと、途中で退屈しなかった気がする。今回はちょっと、テーマが予めわかっていないと(いや、わかってちゃ面白くないんだけど)、途中がちょっとだれるかも。
さて…
ここで困ってしまうのは、今回はこれ以上はどこを切ってもねたばれになりかねないという(笑)。
ああ、あれも言いたいっ。これも言いたいっ。どこがどういう風に凄かったか説明したいっ。
でも・・・しちゃ駄目なんですね(笑)。
今回ほど、こんなにいい作品なのに何も言っちゃいけない!ともどかしい作品はありません。
振り返ってみるとこれまた実に緻密な構成の作品。だらだらと描かれていたかに見えたあーんなことやこーんなこと、あそこやあそこの会話が、後から―というのは、本当にラストでガガガッと全てが解けるので―ラストに来て、「あー!」と。関係者側のドラマも、全て、後になって、「ああああああ・・・」とわかる、納得する、効いてくる。最後で、そりゃなしだろー!な感じ。
そして、何とも皮肉な結末・・・
…あー、説明したいっ。したいのは山々なんですがっ。
ただ、個人的に1つ言いたいのは、この作品で示されるものが、果たして推理小説という形でしなくてはならなかったことなのか、というお決まりの問題がこの作品にもある、ということですね。
ジェイムズ女史の場合は、そういう問題は単純に「推理小説と文学の融合」と説明されてしまうことが多いんですが…
いざ、正に、何かを問うための(と、女史自身が考えていたかは兎も角、そういう形になっている)作品を前にすると、よくわからないのです。
しかも、今回の犯人が「どうしても許せない」と思ったこと、犯人が被害者にあると考えた「罪」は、ぶっちゃけ、ヨーロッパ人でない我々にはちょっとわかりにくい面もあるし。
いくらそういう理由だからって、アナタ、そこまでする?と思う部分もあるし(誰のことかは読んでのお楽しみ)。
敢えて、私でもわかるような単純な割り切り方をしてみると、やっぱり、同じ罪でも人によって受け取り方は随分違うのだなあということ。ある人は、それを死に値すると考えて被害者(その罪においては加害者)を殺す。一方では、その罪すらも憶えていない人間もいる。また或いは、その罪を罰することを良しとして加担する者もいる。…
罪は罪なのですが、それが与える影響は実に様々。
ラストシーンをどう考えるかは人それぞれでしょう…。
と逃げてはいけないので私の感想を1つ書いておくと、うーんやっぱり、××さん、いくら自分も〇〇だからってそうする??と納得のいかない部分もありました(ねたばれになるので伏字にしかできません)。ただ本当にこれは、日本人にはちょっと実感に乏しい話ではと・・・。
私が納得のいかない結末だったのは、確かこの作品だけ…のはず…(以後、最新作の1つ前の『殺人展示室』まではこれから再読なのですが)
しかし、一方で、その、人それぞれになりがちな問題について、明確な答えを示しているのがケイトなんですね。ケイトが警官として、一本筋の通った神経というか根性を持ってこれからも進んでいくだろうことは明らかです。1人、こういう揺るがないキャラクターがいると、読んでいて安心しますし、作品自体の「格」も失われないと思います。
ただ、結末から遡って全体を見直すと、推理小説としてもやっぱりよく出来ています。情報をいかに違和感なく小出しにしていくか、人間ドラマと伏線を兼ね備えた展開、動機の意外さ(ねたばれぎりぎり…)。あんまり深く考えなくても、まず推理小説として、読んでいる間楽しい時間を過ごさせてもらえるのは、頭の悪い私のような読者にも有難いことです。















