2008年06月04日

人は檻から檻へ―京極夏彦『鉄鼠の檻』一・二・三・四(講談社文庫・分冊文庫版)

分冊文庫版 鉄鼠の檻〈1〉 (講談社文庫) 分冊文庫版 鉄鼠の檻〈2〉 (講談社文庫) 分冊文庫版 鉄鼠の檻〈3〉 (講談社文庫) 分冊文庫版 鉄鼠の檻 4

 あー、今回は4分冊です。長いです(笑)。でも、次の作品とか次の次とかはもっと長いんですよね。ま、長いお話大好きだから良し。
 今回も、第1作のネタバレが含まれているので…やっぱりこのシリーズは、最初から読むのが一番いいよ、うん。
 前作とは違って、また暗いお話(というか、前作が珍しく明るいのか?)。
 前作では、というか前作でも、キリスト教の聖職者との問答もあったし、謎解きの舞台はお寺。そして今回は、周囲とは隔絶された謎の寺で、京極堂は、まともに、「科学と宗教」という問題に向き合い、答える。
 で、本当にそのくだりが素晴らしかったのだが…
 素晴らしいからこそ、ここで言葉を尽くせば却って嘘臭くなる。
 この場に引用するだけでも価値が下がってしまいそうで怖い。
 だから、私にとって初めて、これほど、科学と宗教の関係について納得させてくれた文章はなかった、と言うにとどめておく。
 勿論、私だけでなく、宗教関係者の中でも相当に評価は高いと思う。
 引用するのは嫌だけど敢えてこれだけは。(正確ではありません)
 「科学と宗教は互いに補うものではあっても、決して寄り添ってはいけない」
 科学に限界を感じて宗教に走るのも、その逆も間違いだ―と、京極堂は言う。
 これ以上詳しく言うと駄目です。
 とにかく作品を読んで下さい。
 ここを読んで、あの事件を思い出さない人はこの日本では少ないのではないかと思う。
 巻末の解説でも、この作品が書かれた時期からして、あの事件を念頭に置いた、作者なりの答えではないか、とある。私もそう思う。
 4分冊になってますが、途中で1冊がちょっと厚いだけだし、いつもの通り全く読みにくくはないし、またも一気読みです。
 確かに、一気読みしないと情報忘れちゃう、っていうのはあるけど(笑)

 さていつもの面々は…
 逗子に続いて冬の箱根です。いいなあ温泉行きたいなあ。
 嫌だ嫌だと言いつつも、結局乗り出してしまう京極堂。第1作で乗り出しちゃったのが本当に運の尽きだったね。今回も、そもそも、仕事で箱根に行くのに関口を誘っちゃったアンタも悪い!(笑)しかも妹まで仕事で来てた!そこで事件が起きた!その上誰かさんが榎木津まで呼んでしまった!うーん、これほど迷惑がられ不安がられる探偵がいるだろうか。
 そう、この榎木津についても、一つ、書こうと思っていて今までのレビューに書き忘れていたことがある。
 探偵といえば変人、なのはもう当たり前である。
 その元祖であるシャーロック・ホームズ(…も、変わっているのは表面的な癖だけで、実際には至極まともな人のように思えるのだが)は、常に、突然相手の何かを言い当てて驚かせるが、実はこれこれこういう理屈で―――と明かせば、何のことはない。身体的特徴とか癖とか持ち物とか、必ず根拠がある。
 が!
 この榎木津があれこれ言い当てるには、「人の記憶が見える」という特殊能力以外に何の根拠もない。
 超能力者か!?と思わせて実は真っ当な推理、である元祖に対し、他人には全く信じてもらえない特殊能力。本人以外から見れば、彼こそほんまもんの変人である。元祖変人探偵に対して、これ以上のアンチテーゼはないね(笑) 
 ただ、今回は、警察の面々(今回は石井の部下山下警部補など)が、余りにも漫画チックなまでのギャグ担当で、それは余計かなと。普通に見当違いなことをしてるだけで十分なんで、何も落語みたいなやりとりをしなくてもいい、と思う。
posted by 高野正宗 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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